衣服は体温調節や身体保護のために生まれ、日常の生活活動をしやすいものへと発展、さらに自己表現の手段に進化した。多様性の広がりや価値観の変化に伴い、ファッションは流行だけでなく社会的な視点でも見られるようになった。
自分が入社した40年近く前、多くの人からファッション産業は誇るべき平和産業だと教わった。しかし世界の二酸化炭素の約10%を排出し、1億トン近い石油を消費し、Tシャツ1枚に5人分の年間飲料水量に匹敵する水を使用する産業でもある。そこには大量生産・大量消費、大量廃棄を当たり前と考えてきた歴史がある。今や環境負荷を小さくするために、製造にかかる資源やエネルギー使用の抑制、製品ライフサイクルの長命化は世界的な課題だ。
SDGs(持続可能な開発目標)の認知が広がり、この課題に取り組む企業は増えた。だが繊研新聞で「SDGs」の単語の出現回数は21年に倍増して22年をピークに23年は減少。24年も同様の傾向にある。ファッションが社会課題となった今、ファッション産業の環境活動は流行ではなく、潮流にしなければならない。
(樹)