築年数の古い団地を内見した時、部屋のドアの脇に見慣れない四角い小窓を見つけた。不動産屋に聞くと「牛乳瓶受け」という。保冷ボックスもある今、使う人はいないがそのままになっているそうだ。
最近、古い空き家やビルを改装した本屋や専門店が増えてきた。最低限の耐震性や清潔感を確保した上で、古い建物の痕跡を残したものも多い。細くて急な階段や、体を縦にしないと入れない狭い入り口。不便さもインパクトで、記憶に刻まれている。
特に面白かったのは、古い商社ビルをリノベーションした専門店。ビルには元々、旧国道に面した側と、裏手の路地に面した側の両側に扉があった。運用上、旧国道側の扉を塞ぎたいと感じた店主は、デザイナーと相談し、両開きのガラス戸にショップサインを描いた後、一本のネオン管を渡らせ、看板にした。開店中はネオンを光らせる。点灯器具はあえてむき出しで、見た人を立ち止まらせる粋なデザイン。古い建物の生かし方が店の個性やセンスを思わせる例だ。
結局、牛乳瓶受けの物件には住まなかったが、もし住んだら何に使うか。たまに妄想し、なけなしのセンスを鍛える。
(桃)