数年前、複数の減収が続く企業の経営者に、その要因を尋ね回ったことがある。
答えでほぼ共通していたのは、消費志向の変化などに伴う市場変動への対応の遅れだった。
どの経営者も改善すべき点は把握していた。しかし、かつての成功体験に頼る古株やその下で育った社員の意識変革が進まず、改革できないと頭を悩ませているのも共通していた。反対に社員に聞けば、改善意見を具申しても聞き入れられないと嘆き、このままでは立ち行かなくなると危惧(きぐ)して自社を「ゆでガエル」に例える人もいた。その後、苦境を乗り越えられず会社を売却するケースをたびたび見てきた。
思い返せばPDCA(計画・実行・評価・改善)をうまく回せていたところは少なかったように思う。真摯(しんし)に社内の声に耳を傾けなければ、どの段階にも納得と共感はなく、PDCAが回るわけがない。
働き方改革やSDGs(持続可能な開発目標)、DX(デジタルトランスフォーメーション)など課題は増える一方だ。革新と改善には社内対話が重要だと再認識せねばなるまい。
(樹)