他人事は無関心の代表的な言い回しだ。知らないうちに加害者となる場面にはこうした心理がつきまとう。社会課題の多くは問題を抱える当事者の立場で考えなければ解決を遠ざける。
COP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)でモルディブのソーリフ大統領は「気温の上昇幅が1.5度を超えれば、わが国にとり死刑宣告になる」と発言した。海抜の低い島しょ国は世界中の協力がなければ国土が水没する。人災ならば防ぎようはある。それぞれが自国の消失を想像し、その恐れや悲しみの共感が強いほど協力行動は進むだろう。
SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みは環境問題が注目されがちだが、貧困や性差、不平等などの対策も多く含まれている。問題を抱える人の身になり、恵まれない生活を強いられる理不尽を想像するのはそれほど難しいことではない。
それを阻害するのは自分は違うと、自分事とせずに他人事としてしまう無関心だ。「情けは人のためならず」は、行動目的の重要なファクターとして自戒の念に留め置きたい。
(樹)