《視点》一着の服から

2021/10/19 06:23 更新


 環境問題への危機感から、「サステイナブル(持続可能)な物作り」が浸透しているが、企業や個人によってその定義はばらばらであいまいだ。関心や真剣さも異なり、便利に使われていることも多々ある。取材時や記事を執筆する際は、相手がいうサステイナブルが何を指しているのか慎重になる。そして、ファッション産業が今後、どのような存在意義を見出し、地球環境と共存していけるのか考えさせられる。

 先日、ある新興のルームウェアブランドを取材したのだが、CEO(最高経営責任者)がこうつぶやいた。「環境や社会問題と向き合いながら収益を出すビジネスを目指しているのにアパレルを始めるって矛盾していますよね」。同社はもともと動画制作会社で異業種からの参入。フィリピンの貧困問題に何か貢献したいと、現地の人を動画クリエイターとして採用し、雇用を創出している。

 「でも、このルームウェアが、ファッション産業が環境に与えている悪影響や課題を知るきっかけになるのなら、やる意味がある」。その言葉にハッとした。

 これからの時代は共感が資産になると唱える人もいる。環境問題の取り組みで何を目指し、何がしたいのか、できるのか。その信念を一着の服に込め、問題意識を喚起し、共感を広げる。それもまた、アパレル企業の使命なのかもしれない。

(麻)



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