《視点》流行で終わらせない

2021/09/28 06:23 更新


 ファッションブランドが、サステイナブル(持続可能)な考え方に基づいて物作りを行うことが当たり前になりつつある。地球環境に悪影響を及ぼさない物作り、適時適量適品の生産、焼却処分の削減。働く環境や適性な賃金も守られなくてはいけない。この考え方はまだ広がったばかりで、乗り越えなければならない課題が山積している。

 そんななか、日本のアパレルでは「サステイナブルはもう当たり前、声高に発信するのはもう遅い」という声があるという。当たり前になるのは良い流れだ。だが、本当に当たり前になったのか。持続可能性を語ることが最先端の流行という風潮はあったが、実際、大きなうねりになったとは言えない。再生素材を使った服を少し作っただけでは本当のサステイナブルではないし、企業としての取り組みは始まったばかりで検証も必要だ。そんななか「発信するのはもう遅い」と言われてもしっくりこない。

 この流れはいわゆるファッショントレンドとは一線を画した社会における重要課題だ。地球全体で取り組まなくてはならず、サステイナブルを重視する欧州ブランドの多くは毎年、新たな取り組みを発表している。その発信はむしろ強力になり、啓蒙(けいもう)につながっている。こういった社会課題が広く浸透するには時間がかかる。流行で終わらせず、発信を続けてほしい。

(規)



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