《視点》価値を生む余白

2021/09/16 06:23 更新


 あるメーカーの役員に生地輸出について聞いたとき、コロナ禍前は「年3、4回、海外出張し、面会を重ねて関係性を作り、毎回のオーダーにつなげていた」という。今はオンラインでやり取りし、一定量のオーダーはあるが「新商品など追加提案がしにくく、オーダーを増やせない」と漏らした。

 「出張すると『わざわざ来てくれたし、もう少し話を聞こうか』と雑談から新商品の話題まで話を広げやすかった」という。オンラインだと「話が必要最低限になる」と嘆いた。「お客さんは必要以上に買わなくて済むようになったとも言えるけど」と苦笑い。

 コロナ禍前を振り返ると無駄だったな、と感じることがある。一方で人によってはその無駄が価値を生んでいたケースもあったのではないか。自分も色々な技術の進歩に利便性を感じながらも、もどかしさを感じる場面がある。最短距離で、最高効率で価値を生もうとするあまり、無駄かもしれないけれど、余白のような時間がどんどん少なくなっている気がする。

 余白をどう埋めていくか、その過程に人の創造性が発揮されるのではないか。技術を使ってみて、そのことを認識できたことがよかった。だから技術を否定したいのではない。技術をうまく利用して効率を追求しつつ、余白も残して楽しめる力をつけたいと思う。

(嗣)



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