アパレルの減産傾向が明確になってきた。供給過多やSDGs(持続可能な開発目標)もあるが、コロナ禍による外出の減少が大きく影響し、自宅を中心とする生活に即したワードローブが主体になっているためだ。快適さ、着心地、楽さなどが洋服選定の優先項目になり、支出が抑えられている。
アパレル企業も今秋冬物の生産を、コロナ下で手控えた昨年並みかそれ以上に抑えるところが大勢だ。デザインはなるべくシンプルに、買う人を選ばない無難な企画になっている。力を入れる点はどちらかというと機能性や使い勝手の良さ、心地よさだ。ビジュアルでのプレーン化が目立ち、展示会も視覚的にあまりインパクトのない提案が目立つ。
一方、ブランドの個性で購入していた顧客も買い控えている。企画を簡素化しすぎると、以前の顧客が戻ってこなくなるという危機感を抱くブランドも出てきた。買い控えといっても服を楽しみたいという潜在的な欲求がなくなったわけではないと見て、一部であえてブランドの個性を維持して提案するところもある。それを顧客に情報発信することで、来店につなげるという成果も出ているようだ。作り手もユーザーもファッションを楽しむということはコロナ下でも生き残る選択肢でありたい。
(武)