昨年以降、上場企業の希望退職募集が増加している。東京商工リサーチによると、コロナ禍の昨年は93社で前の年の2.6倍だったが、今年は1~3月ですでに41社とこれも前年の2倍以上のペース。不名誉なことに、いずれも業種別のトップはアパレル・繊維製品だ。
しかし、繊維・アパレル企業の苦境はコロナ禍以前から続いていた。希望退職という名のリストラは2010年代やそれ以前からも幾度となく行われているが、真の意味のリストラクチャリング(企業再構築)を成し遂げた例はほとんど見られない。
希望退職は多くのケースでは年長者中心に対象年齢を示し、退職金を加算して自発的な退職を促すもの。企業にとっては人件費の高い年長者の数を減らし、スリム化で固定費を削減したいのだろうが、手放したくないエース級の人材ほどさっさと退職してしまい、逆に企業が辞めてほしいと思う人ほど会社に居座る傾向があるという。
それは当然だろう。〝はないちもんめ〟のように都合よく人を入れ替えられるのなら、企業経営に苦労はない。
希望退職とは結局、人材を〝人財〟にする努力を怠った結果のように思えてならない。
(恵)