最近、静かに流行中のダーニング(darning)。「繕い物。ほころびをかがること」で、欧州に伝わる手芸の一つ。靴下やセーターなどニット製品にできた穴を糸で〝お直し〟する技法だ。陶磁器の金継ぎに似て、修繕箇所をあえて目立たせる面白さもある。
手作りやお直しの広がりで、オンライン上には初心者向けの情報も多い。意外と簡単そうなので、試すことにした。小さな穴に目をつぶってきたアイテムが、かなりあるのだ。
お恥ずかしいが、それだけ愛着があるとも言える。多少は断捨離を繰り返した中で残ってきたもので、付き合いは長い。それに、繕いが失敗したとしても、惜しくない。元々、穴開きなのだから。うまくいけば、ラッキー!というだけの心は軽い。裁縫箱に眠る刺繍糸も日の目を見るし、一石二鳥だ。しかも、楽しい。糸をタテとヨコに織物のように配置するだけなのに。
大事な物はより長く使う、自分の手で物を作る――このシンプルな欲求が生む需要は、ブームで終わらないのではないか。私も可愛い糸を買いに行こう。
(純)