《視点》コロナ禍の工場を支えたビジネス

2020/12/22 06:23 更新


 この1年、DtoC(メーカー直販)で命脈を保った工場は多いのではないだろうか。売り上げより、精神面で支えになっていたように思う。商品が売れたことや、購入者に喜んでもらえた経験が自信につながったという話を何人も聞いた。

 「僕らでもやれるかもしれないと思えた」と、あるニットメーカーの社長。主力の受託加工は、コロナ禍で受注が激減。営業に行くと、はなから値下げを要望され、頭を抱えた。一方で、今春立ち上げた自社ブランドのEC販売は好調。産地と自社の技術を生かしたマスクに始まり、今は服も売る。商品をきっかけに、新規販路からの依頼も舞い込んだ。

 社内にも好影響をもたらした。自社商品の最終消費者が明確になったことが大きい。購入者を分析し、ニーズを次の企画にどのように反映できるか考える。社員にマーケティングのスキルはないが、その視点が加わったことで「意識が向上した」。購入者から寄せられた感想は、工員にとっても励みになるという。

 工場発ブランドは出口戦略につまづくことが多く、成功例は少ない。しかし、今はECやSNS、クラウドファンディングなどを活用し、消費者と直接つながりやすくなった。自ら需要を創造する前向きな姿勢が、ピンチをチャンスに変える。

(侑)



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