国内の皮革卸が、消費者との接点を作る動きが目立ってきた。これまではどちらかというと、展示会でメーカーの担当者との会話にとどまっていた受注型のビジネスだが、革製品の需要が低迷している状況をなんとか打開しようと、消費者にダイレクトに伝えるかたちでの取り組みを始めている。
例えば、皮革卸の丸喜が始めた医療従事者を支援するブルーレザープロジェクト。店頭に革のモチーフが描れたポスターを貼り、ブルーの革製品を集めた売り場を作って消費を喚起するというもの。革の仕入れ先やアイテムは問わず、参加企業は一律3万円の寄付金を支払うのみだ。
新型肺炎の流行に伴って、多くの企業が一定の利益を寄付するチャリティー企画を打ち出しているが、特に革靴関連の企業にその余裕は全くないだろうなと感じていた。浅草の靴産業はこの数年、淘汰(とうた)の波が収まらず、靴は外出自粛やリモートワークに伴って着用頻度が少なくなり、専門店企業も含めて中長期的な経営の見通しは厳しいはずだからだ。そういった状態でも、社会に貢献していると店頭で胸を張れる形があるのは、ありがたいことだと思う。
(渉)