『ルポ技能実習生』(澤田晃宏著)は17年の「技能実習法」施行から19年の「特定技能」資格新設前後に焦点を当て、主にベトナム人を追いながら問題の所在を浮かび上がらせている。実習生が失踪する大きな理由は、来日前に想定していたよりも稼げないことだ。
業界別の失踪者の多さは建設業、農業に次いで繊維・衣服が挙がる。ベトナム・ハノイの送り出し機関幹部のコメントとして、縫製などでは「手取り賃金は10万円に満たない」「出来高で払われるところも多く、長時間労働になりやすい」と語られる。残業を重ねても来日のために背負った借金を返済できず、貯金もできない仕事は敬遠されて当然だろう。実習生は工場を選んだり、移ったりする自由すらないのだ。
コロナ禍で衣服縫製の受注が減るなか、実習生がマスクを生産できる措置が国によってなされた。日本の最低賃金すらクリアできない実情を抱えたままでの工場の延命は支持されるのか。急場はしのげても、世界的になっている労働力争奪戦には勝てないだろう。
(近)