ある商社は決算会見で減収要因に触れ、「アパレルの物作りが変わってきた」という。市況の低迷による需要の減少は前提だが、「需要を上回る在庫を極力持たず、必要な時に、必要な量だけを作ろうとする姿勢がより顕著になっている」と説明した。
著名ブランドの在庫処分の仕方が大々的に報道され、社会的な問題になり、特に在庫に対する問題意識が高まった。サステイナビリティー(持続可能性)という世界的な潮流は、在庫を過剰に抱えないことが良しとされる機運を高めていった。
在庫は極力持たず、かつ販売機会ロスのないようにするため、アパレルの物作りは一層QRが重要になっている。ただでさえ、サプライチェーンはグローバルに多様化し、管理は複雑になる中で、より高度なことをやりきらないといけない。
生産や物流の自動化、AI(人工知能)への期待は高いが、それらを使いこなす世の中はもう少し先のはず。今のように利益を削りながら消耗してしまう前に、製販それぞれの立場を理解しながら、持続発展が可能な物作りの仕組みを中長期的な視野で共に考える時なのだろう。
(嗣)