今年は売り上げで苦しむ会社が特に多い気がしていただけに、創業以来、増収を続ける企業の社長との会話で「今年のテーマは〝謙虚〟です」という言葉が妙に心に残った。
本人にとっては好調な業績におごることへの戒めの気持ちであり、増収の秘訣(ひけつ)というわけではないのだろう。
ただ、この簡単な単語を実行することが意外に難しい。反対に傲慢とは言わずとも、自己を押し通すことに力を割いている場面に出くわすことは多い。他人の話に耳を貸さず、懸命に自分を優位にしようとする姿には滑稽さや醜さを感じることも少なくない。本人にはその姿が見えていない。
認め合うことは何も対人に限ったことだけではなく、環境にも当てはまる。刻々変化を続ける環境に身が置かれていることを忘れ、傲慢であり続けると知らずのうちに、時代から取り残されていく。環境からも認められる存在であることは生存要件のようでもある。謙虚な視線で周囲を見れば、時代のニーズも見つけやすくなるのだろう。
(樹)