最近、〝専門〟を掲げる飲食店に行くことが増えた。例えば、肉屋直営の肉バルなら、目利きが厳選した良質な肉が手ごろな価格で食べられるし、パクチー専門店ならアレンジが多彩で楽しいから。一つの食材や料理に特化した飲食店は昔からあるが、この数年急増しているそうだ。
対象とする領域はどんどんニッチになり、今や、とろさば専門、ポトフ専門、生クリーム専門まである。客層も利用シーンもかなり限定されるはずだが、飲食業界が不況の昨今でも繁盛しているというのだから面白い。
背景にあるのが情報化社会で、消費者は食べたいものや目的によって店を使い分けるようになり、「何でもある」店はアンテナに引っかからなくなったということらしい。加えて、そこそこのものは、安価でどこでも食べられる。特に中小の飲食店では、専門店化で特徴を明確に示すことが、生き残り策の一つと言われている。
テキスタイルやニットの合同展を取材していて、これに通じるものがあった。最近、自社の〝売り〟やテーマを定め、展示商品を絞る出展者が増えている。間口を狭めることにはなるが、会社や産地の専門性がフックになって、商談は好調のようだ。そこそこの品質が安価に手に入る時代。この専門性は、消費者にも響くはずだ。
(侑)