《視点》在庫ビジネス

2018/09/18 06:23 更新


 バーバリーが余剰在庫を焼却処分していたことに批判が高まり、同社は焼却処分をやめると発表した。不良在庫の廃棄処分は日本のアパレル業界でもずっとやられていた。アパレルビジネスの宿命として見込み生産は避けられず、販売機会ロスは極力回避したいという思いもなくならない。

 新商品の登場が不良在庫をもたらす例もある。90年代に、アイロンがけ不要のドレスシャツが登場し爆発的に普及した。素材メーカーが開発した加工技術が契機だった。シャツ業界は新商品の登場に沸く一方、頭の痛い問題も発生した。

 ドレスシャツは裄丈(ゆきたけ)と首回りの二つのサイズの組み合わせの種類だけ商品を作らないといけない。店頭でサイズ切れを起こさないよう、常に一定量の商品をメーカーが抱えておく必要のある典型的な在庫ビジネスだ。

 ノーアイロンシャツの登場によって、従来の商品は行き場のない不良在庫となってしまった。これが多くのシャツメーカーを苦しめ、90年代後半から相次いだシャツメーカー破綻の遠因にもなった。緩やかな変化なら企業も対応できただろうが、変化が急すぎた。取引先や消費者の要望に対応してやってきたことが結果的に自分たちの首を絞めてしまった。彼らはアパレルビジネスの不条理を嘆いたことだろう。

(尊)



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