商店街から客足が遠のき、消費者が大型商業施設に向かうようになって久しい。廃業などで減少傾向が続く街なかの専門店だが、最近少し風向きが変わってきている。来店客数は変わらないのに、客単価が伸びたという店が増えているのだ。
売り上げが伸びた店に多く見られるのは、低価格品や値引きを抑え、自分が価値あると選んだ商品を適価で売る努力をしていること。個人商店では販売員が変わることはめったにないので、接客に大きな変化はない。仕入れ商品や販売方法を変えたことが収益につながっている。
かつては「他店より安く」のライバルは、同じ商圏内の実店舗だった。今、最も価格を比較しやすいのはスマートフォンで見るネットの中の店だ。「足を運ばず安く買う」は若者だけにとどまらない。
「そこにしかない」個性が実店舗に足を運ぶ動機であり、価値のはず。卸ビジネスでは仕入れる側も納める側も、その創造に真剣に向き合わねばならない。ECの台頭は実店舗に逆風だけでなく新たな機会、いや再認識を与えたとも言える。(樹)