「トップダウン」と聞くとワンマン社長が周囲の意見も聞かず独断で物事を決めてしまうネガティブなイメージがあるが、それが決して悪いとも限らない。急成長を続け、25年12月期に売上高1200億円を見込むアシックス「オニツカタイガー」の歩みを知ると、理想的な意思決定を学べる。
現在の躍進は自らを「ラグジュアリーライフスタイルブランド」と再定義し、展開商品や価格、店装を主導できる直販を軸に事業構造を変革できたことが大きい。ところが改革の始まった11年は売り上げに占める直販比率が5%程度。圧倒的に卸売りがビジネスの中心だった。そのため直営店を軸とした戦略を打ち出した当初は社内の反発が大きく、「店が大き過ぎる」「経費を掛け過ぎている」といった批判が相次いだ。
そんな混乱を鎮めたのは、当時社長だった尾山基氏(現シニアアドバイザー)。事業部長の方針に従うよう社員に指示し、組織も大胆に見直した。この決定後の成否は多くの人が知る通りだ。
業務を担うのは現場の従業員であり、組織運営は多くの人の賛同を得て進めるべきだ。しかし議論百出でその収拾に時間を要し、成長の時機を逸してしまうのでは本末転倒。会社の進むべき道はどちらか。大きな決断を下すのは組織の長の役割だ。オニツカタイガーの復活劇を見て、そう思った。