《解説》ユニクロがトップアスリートの服を作る2つの理由

2024/05/25 06:30 更新


ストックホルム出店がきっかけでスウェーデン選手団と契約することになった(パートナーシップ締結記者会見で握手する柳井正ファストリ会長兼社長(左)と五輪委員会ピーター・レイネボCEO

 ユニクロは24年のパリ五輪・パラリンピックで、スウェーデン代表選手団が着用する公式ウェアを提供する。21年の東京大会、22年の北京大会に次ぐ3回目だ。世界中の誰でも着られる「ライフウェア=究極の普段着」を売るユニクロが、なぜトップアスリート専用の服を作るのか。理由は二つある。

(本社編集部=柏木均之)

【関連記事】ユニクロ パリ五輪スウェーデン代表にウェアを提供

ブランド認知を広げる

 一つはブランディングだ。世界的に注目度の高いトップアスリートがブランドのロゴ入りのウェアを着てプレイすることは、グローバル市場でのユニクロの認知拡大につながる。これまでもユニクロはスポーツ選手と契約し、それぞれの競技用のウェアを提供してきた。

 グローバルブランドアンバサダーにはテニスのロジャー・フェデラー、錦織圭、車椅子テニスの国枝慎吾、スノーボードの平野歩夢らが名を連ねる。個人の活躍が契約の決め手になった彼らと比べ、スウェーデンチームと出会った経緯は少し事情が異なる。

 1号店をストックホルムに出した18年、スウェーデン五輪委員会から選手団のウェア提供の打診を直接受けた。16年大会でウェアを提供したH&Mに代わって契約を結ぶことは、ライバル企業の母国である市場でユニクロの認知を広げる格好のチャンスといえた。

 ユニクロは試合や練習用だけでなく、開閉会式や表彰式でも着用するセレモニー用のウェアも提供した。スウェーデンチームは東京五輪で9個、北京五輪で18個のメダルを獲得して結果を出した。ユニクロは契約をパリ大会まで延長した。

 10カ国・71店ある欧州は、ユニクロが規模拡大を狙う市場の一つだ。コロナ禍の落ち込みからすでに脱して成長軌道に乗っており、24年8月期は売上高2500億円(前期比3割増)、営業利益400億円(45%増)と過去最高業績を見込む。

 欧州最多の27店があるフランスの首都が舞台となる国際的なスポーツ大会で、東京や北京での大会に引けを取らない活躍をスウェーデン選手団が見せることは「欧州市場でのシェア0.5%未満」のユニクロが、市場での認知を高め、成長するための起爆剤の一つになる。

パリ大会用に開発した機能素材やデザインの一部はユニクロの商品として一般向けにも販売する

商品の機能性を高める

≫続きは繊研電子版で

関連キーワードピックアップニュース



この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事