《詳報》ユニクロ柳井会長が新入社員に送った言葉 すべての出発点は店にある

2024/03/30 06:30 更新


入社式でメッセージを送る柳井会長

 3月1日、ファーストリテイリングが有明本部で入社式を開催した。柳井正会長兼社長が式に参加した約270人の新入社員を前にどんなメッセージを送ったのか。3月4日付の紙面では紹介しきれなかった内容を公開する。

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「まず基本を身に着ける」

 社会に貢献するのが社会人の役割だ。お客様が満足しない仕事は仕事ではない。小売り業は店やECで商品を買ってくださるお客様に満足してもらえているかが基準だ。売る側でなく、買う側に評価の基準がある。

 まず仕事の基本を身に着けてほしい。店長や職場のリーダーになれば人に仕事を教える立場になる。基本を完全にマスターしてないと教えられない。知っているだけでは駄目で、自分でできない限り、人の指導はできない。

 ユニクロの社員の多くは店舗で働く。仕事の基本を店で働きながら身に着ける。お客様に合う、時代に合う商品が何か考え、販売、稼働、レイアウトの計画を立て、仲間と一緒になって実行し、改善する。この繰り返しだ。

 基本が高いレベルでできれば、何をやっても成功できる。周囲の人はあなたを尊重してくれる。本気で仕事に向き合うから周囲が協力してくれる。目立たないが大切な業務を軽視して適当に済ませていると絶対に成長しない。接客、品出し、レイアウト、ディスプレー、清掃、人の採用、教育。すべて最高水準でできるようになることだ。

 皆さんのほとんどが本部ではなく、店舗でキャリアをスタートする最大の理由はここにある。人生で一度の一番大切な時期だ。ここを逃すともう教えてもらえない。徹底的に学んで下さい。店で学んだことは一生の財産になる。決して損はしない。

「自分より人のために」

 お客様、店の仲間、近所の人、周辺のお店の人を尊重し、その人たちのために何ができるのか。常に考えてほしい。店ではチームで仕事をする。簡単ではない。メンバーそれぞれに特徴があり役割がある。互いの信頼関係がなければ、業務を分担しながら有機的につながって働くことはできない。

 店の仕事は一見すると非常に単純だ。毎日なんでこんなことをするのか。自分の考えのほうが正しいと思うこともあるだろう。それは間違いだ。商売ではメリットや付加価値がないと、相手は言うことを聞いてくれない。お客様や店の仲間の役に立つ仕事ができないと、信用してもらえない。

 かくいう私も、大学を卒業して大手スーパーで仕事をしたが、すぐ辞めてしまい、故郷に帰って父がやっている紳士服の店で働くことになった。何も知らない生意気な新人なのに「こうやったほうが良い」「これは違う」と店主気取りで指示を出し、残念なことに7人いた男性従業員が6人辞めて1人になってしまった。

 いきなり誰もいなくなって、あらゆる仕事が自分に回ってきた。接客も品出しも、店の掃除や経理、財務、マーケティングまで全部自分でやる羽目になってしまった。どうやったらお客さんが喜んでくれるか、なぜ売れるのか、なぜ売れないのか、商売の原点を私自身、身をもって考え、学んだ。

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