ユニクロの北米事業の業績が好調だ。22年8月期は増収、初の黒字化を見込む。この間進めてきたブランディング、マーケティング強化で売り上げが伸び、利益面でも粗利益率改善、経費削減に取り組んだ成果が出た。今後は店舗数拡大とOtoO(オンラインとオフラインの融合)などに取り組み、27年8月期に売り上げ3000億円、営業利益率20%を目指す。
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05年9月、ニュージャージー州の1号店を皮切りに米国、カナダの主要都市に出店してきたが、赤字が続いていた。10年9月にユニクロ米国CEO(最高経営責任者)に赴任した塚越大介ファーストリテイリンググループ上席執行役員は、事業構造改革のため、まず「ブランディングの徹底とマーケティング強化」に取り組んだ。
新聞広告、ケーブルテレビのCM、SNSでの情報発信を増やし、ブランドコンセプトの「ライフウェア」の浸透を図り、従業員にも自社の存在意義の理解を促した。この結果、米国の主要都市でのブランド認知度が向上し、好感度も2年前に比べ1.7倍に高まった。
Tシャツ、フリース、「エアリズム」などコア商品は店舗とECでの情報発信を増やし、スタイリストやライターなど有力なオピニオンリーダーとの協業でその魅力を消費者に伝えるようにもした。現地客の要望を元にクロップドTシャツ、ダメージジーンズ、ラウンジウェアなども開発した。これらの商品を中心にプロパー販売比率が向上した。並行して不良在庫処分を進め、発注や販売期間の管理強化、航空便を活用した売れ筋商品の追加投入による機会ロス低減にも取り組んだ。不採算店舗を減らし、既存店の賃料見直しも行った。店舗ごとの適正在庫水準を見極め、セルフレジ、ICタグ導入で運営を効率化した。これらにより粗利益率はコロナ前の19年8月期に比べ8ポイント改善し、販売・管理費も20%削減できた。
黒字を継続的に出していける体制が整ったと見て、今後はさらなる成長戦略を推進する。22年2月時点でカナダに14店、米国に43店あるが、当面は年30店を出し、5年後には200店を目指す。東海岸、西海岸で有力SCへの出店、グローバル旗艦店開設を進め、未出店の都市にも出し、ブランドの存在感を高める。店舗とECの連携も強化し、個別の客のニーズに沿った商品やサービスが提供できる環境を整備する。