スイス最大の銀行で世界有数の金融持ち株会社のUBSは、25年度までにアメリカで10万店以上が閉店すると予想している。総店舗数は、19年の88万3000店から25年には78万2000店になると試算した。カテゴリー別では、アパレルとアクセサリーの閉店数が2万4000店と最も多い。次いで多いのは家電1万2000店で、ホームファニシングとグロサリーストアが各1万1000店と見積もっている。最も閉店が少ないカテゴリーは車のパーツ600店とホームインプルーブメントの3500店だ。
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アパレルの19年第3四半期の売上高は、景気後退で落ち込んだ09年第3四半期に比べると32%増え、景気後退前のピークより22%伸びた。それでも店舗数は、17年第1四半期に比べて5.7%減っている。専門店とデパートの閉店は加速すると見られているが、オフプライスストアは店舗数、既存店ベースの売り上げ共に伸ばしている。UBSは、ギャップとLブランズは不採算店閉店を加速し続ける必要があるとする一方、オフプライスストアは店舗数を増やし続けると予測する。TJX、バーリントン、ロスストアーズのアパレル店の総売上高に占める割合は、10年の21%から今は33%に増えている。
アパレルと靴の直近の1週間の売り上げは、3月及び4月初めに比べて上昇したという。政府からの新型コロナウイルス対策補助金が出たことが一因とみられている。アパレルの最近の売れ筋は、室内で着るくつろいだ服から、アスレチックウェアに変わってきていると報告された。靴もスニーカーが売れていて、特に好調なのはナイキとスケッチャーズ。ただし、売り上げと在庫が通常のレベルに戻るのは来年とみられている。ネットショッピングに訪れる人は増えているが、購買率が減っているという。
一方、デパートは直近12カ月の売上高は前年に比べて4%下がり、前回の景気後退前と比べて34%下がった。UBSは、デパートは17年以来多くの店を閉めてきたが、今後さらに閉店するとみる。
ショッピングモールも、100カ所以上が25年までに閉鎖されるとみられている。従業員数500人以下の中小の店舗も打撃が大きく、ウォルマート、ターゲット、TJX、コストコ、ホームデポ、ロウズ、ロスストアーズなどの大手がより巨大化する模様だ。19年の時点でも、これらの店は1平方フィート当たりの売り上げを伸ばし、生産性を上げていた。
総小売売上高におけるネット販売の割合は、19年度の15%から25年度は25%に上昇するとみられている。ただし、アパレルに関しては現在の25%から25年度は40%に増えると予想されている。
オンラインで費やす金額は、5年前は世帯あたり3700ドルだったが、19年は5800ドル。ウォルマート、サムズクラブ、ターゲット、コストコなど従来型の大型小売店がデジタル受注への投資に力を入れていて、ネット販売も大手がより大きくなるとみられている。新型コロナウイルスにより、多くの消費者がオンラインショッピングに移行し、感染が収まっても実店舗には戻らない、あるいは実店舗に来る回数を限定すると予想されている。店が再開しても、人ごみを恐れる状況はしばらく続きそうだ。UBSは、訪れる店の数が減ることから、差別化はますます重要になると提言している。
(ニューヨーク=杉本佳子通信員)