伊ファッション業界 生産再開求める動き

2020/04/22 06:26 更新


 4月10日の首相令により、イタリア全土に及ぶ移動制限や生産活動の制限など、感染拡大抑制のための措置が5月3日まで延長された。感染拡大のピークは越えたとされる伊だが、ロンバルディア州など感染拡大が顕著な地域では、まだ楽観視できない状況だ。その中で、伊ファッション業界では5月4日を待たずに生産活動を再開する動きが出てきた。

【関連記事】地方の縫製工場 受注激減で相次ぎ休業 マスク生産で社会貢献も

 17日、伊ファッション経団連は、伊の代表的な三つの労働組合と、テキスタイル、アパレル、洋品の生産活動再開に関して合意した。時差出勤、公共交通を用いない通勤手段の提供、週一度の消毒、マスクなど防護具の提供など、安全性確保のための具体策について細かく規定している。

 同団体のクラウディオ・マレンツィ会長は「今、再開を決断せねば、伊ファッション業界の5割の企業が倒産する。特に全体の9割を占める中小企業への影響は甚大だ。国の第二の製造業をつぶすわけにはいかない」とする。

 ロンバルディア州に比べて、感染拡大が少なかったトスカーナ州のテキスタイル産地プラートでは、テキスタイル関連企業が生産活動再開を要求している。20日朝、プラートのテキスタイル関連企業約200社は、プラート県知事と伊政府に向けて、法的有効性のある認定済み電子メールを一斉送信し、生産活動の即時再開を求めた。

 「ファッションはシーズン性があり、タイミングを逃すことはできない。また未納品となった場合、補償を請求される恐れがある」とする。北イタリアのベネト州では、同州法により14日から工場が生産を再開しているが、トスカーナ州知事は17日、政府に対し「輸出が売り上げの25%以上を占める企業のみの生産活動再開」を提案した。プラートのテキスタイル産業は、小さな企業や工房のネットワークの上で成り立つ。その再開可能なカテゴリーに含まれない企業が多数を占めているのが現状だ。

 「グッチ」は、先月からすでにマスクと防護服の製造に協力しており、その生産活動は「必需品製造」として、ロックダウン中も認可されていたが、20日フィレンツェ県スカンディッチ市の、同ブランドのバッグや靴のプロトタイプ製造部門「アートラブ」で、自社コレクションのための生産活動を再開した。

 安全性の確保については、細菌学者が監修。交代勤務や、通勤への社用車提供、マスク、手袋、防護眼鏡の「防護キット」の提供、職場や食堂、更衣室などでのソーシャルディスタンス確保、消毒など、細部にわたり指定されている。

(ミラノ=高橋恵通信員)

関連キーワード新型コロナウイルス情報



この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事