デジタル化の波が一気に押し寄せてきた。商社は「変化はチャンス」として、その波を捉えつつある。先行するのは、生産現場でのロスの削減やオフィス業務の生産性の向上だ。
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IoTやAIを活用
物作りの現場はスマートファクトリーの方向に進んでいる。双日は縫製ラインの自動・無人化に取り組み、18年度にパイロットラインを設置。豊田通商は生産面で標準化、省人化、ロボット化の実現に向けて研究中だ。東洋紡STCなど東洋紡グループは、製造現場でのIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)の活用などを研究、繊維では富山事業所の庄川工場が先行する。ビッグデータの解析で染色の再現性を高め、再加工を「限りなくゼロに近づける」試みだ。「匠(たくみ)の技をデジタル化し、再現する取り組みは数年で大きく進む」と見る。
顧客支援も大きなテーマだ。伊藤忠商事や三井物産はOEM(相手先ブランドによる生産)でデジタル技術を活用する。伊藤忠は、ECサイトとの取り組みが「非常に好調」。サイト限定ブランドのデータ分析や商品供給などを担い、「サイトからは売り逃しがなくなった。ブランドからは正価で販売できていると評価され、成果は想定以上」と手応えを得ている。
専門商社で動きが速いのは豊島。コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)を立ち上げ、国内外のITベンチャー企業に出資、取引先にIT関連の商材を提案、紹介する。このCVCを通じ、アパレル向け対話型コマースプラットフォーム「フェイシー」を提供するスタイラー(東京)と資本・業務提携した。スタイラーのプラットフォームを通じ取引先のオムニチャネル化を支援する。
デスクワークを革新
日常業務の効率化でもロボが活躍する。帝人フロンティアは、本社の経理関連作業でRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と呼ばれる画像認識技術などを生かしてオフィス業務の自動・効率化に取り組み始めた。「デスクワークを革新」し、労働生産性を高める。このRPAは注目度が高く、複数社が導入を検討する。
ただ、AIを活用すれば未来が開けるかといえば、そうではない。「何を目的にどんなデータを分析、解析させるかで結果は大きく異なる」からだ。「同質化」への懸念もある。瀧定名古屋の瀧昌之社長は、「IoTは生産現場でこそ活用すべきだが、重衣料ではイメージしにくく、過去の失敗例もある」。AIの活用は、「ファッションでどうフレームを設定するかで従来のプログラムと変わらないこともあり、同質化もありうる。根拠のない流行」と見る。