ファッションが好きで、自分なりの接客や提案などで喜んでもらったり、すてきになったり、楽しく感じてもらえる瞬間に魅力を感じるスタッフも多い。一方で、販売員採用は全体的に苦戦傾向になっている。現場で輝き、キャリアを積んでいる販売職にやりがいを聞いた。
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総合衣料品専門店の田原屋(神奈川県川崎市)の「パシオス」相模原南台(神奈川県相模原市)店長を務める新井香菜さん。入社7年目の29歳で、店長職は3店目。早い時期から責任のある役職を任せられることへのやりがいを感じている。同社の原点である「すべてはお客様のためだけに」を念頭に、人柄や前向きな姿勢で店を盛り上げている。
店長歴任でキャリア積む
新井さんは教育系の学科を卒業し、保育士資格を持っている。子供が好きで資格を生かすことも考えられたが、ファッションも好き。そして、学生時代のアルバイト経験が飲食など接客業だったため、「販売職でキャリアを積みたい」と、専門店企業を志望した。
さらにメンズやレディスなどを専門にする企業ではなく、年齢や性別に関係なく、時流や環境変化にも対応できる総合衣料品店に魅力を感じた。「総合衣料品業態では子供関連も扱える。さらに企業の成長性も感じられた点が決め手」という。
田原屋は本部勤務も含めた総合職と勤務地を限定したエリア社員の採用。エリア社員は基本、店長職を目指しキャリアアップが早いことも特徴だ。
入社1年間は研修期間で、町田三輪店など2店で売り場や商品などの知識も含めて経験。新店だった鎌倉大船店では先輩店長のもとで開店準備からの貴重な経験も積んだ。
2年目は店長代行からスタートし店長に。そして、3月にオープンした相模原南台店店長とキャリアを積んでいる。「新店オープンを任せられるのは早い」(人事)と、新井さんへの信頼や期待が高い。既存店の店長と違い、売り上げの基盤や顧客がいない新店立ち上げに、「プレッシャーは大きく大変だったが、良い経験になった」と新井さん。

現場の意見を上げる
店舗は基本、本部からの商品や価格を元に運営する。しかし、店舗ごとに大きさや形が違うため、現場では手に取りやすさ、見やすさなどを工夫する。例えば、商品量が少ない時期はラックに商品を縦に陳列しないで、客に正面を向けるようにディスプレーする。時期によっては、「これは値下げしないと動かない」「こんな商品があれば売り上げにつながる」など現場からの意見を上げる。品揃えや売価変更などが売り上げにつながった時は販売職としてやりがいを感じている。また、客からの「ありがとう」「また来ますね」などの言葉もうれしさと支えになっている。
現場研修から店長代理、店長と早くから責任を任せられる一方で、店長によるOJT(現場教育)体制でキャリアが積めるようにサポート。店長はさらに店長兼任の地区リーダーに。新井さんは今、指導する立場になっている。新店オープンで店長職に専念していたが、6月から中途入社の研修を行う。「今まで指導してもらったことを教えていきたい。後輩の育成にも力を入れる」と意気込む。
就職活動時には研修やキャリアアップの説明がしっかりとあり、「エリア限定で勤務できる」ことも魅力。現場が好きで、現在は本部のバイヤーなどに興味はなく、好きな販売職のスキルをさらに磨いていくことが優先事項となっている。
就活生には「好きなことにこだわることも良いが、広い視野を持って違う世界を見ることも大事」と新井さん。自身も好きな子供関連にこだわらずに就活し、今ではメンズや寝具など幅広いアイテムを扱い、幅広い客層と楽しみながら勤務している。
■ここがすごい!
「新井さんの強みはコミュニケーション能力です。店舗スタッフへ的確な指示を出しながら、店舗運営や売り上げ向上に貢献しています。また、新人店長の教育や新店の立ち上げといった実績も豊富です。今後はさらなる経験を積み重ね、次世代のリーダーとして活躍する事を期待しています」(森山大輔販売部部長)
(繊研新聞本紙25年6月18日付)