■クレモン＝フェランの夏フェス
Rebelles /「反逆者たち」というテーマにつられ、パリから汽車で４時間弱（もかけて）、オーヴェルニュ・ローム・アルプ圏の火山帯に囲まれた仏中部の古い都市、クレルモン＝フェラン / Clermont-Ferrand で開催されている「素晴らしいテキスタイルの国際フェスティヴァル / Festival International des Textiles Extra Ordinaires (FITE) を見に行った。
言葉の美しさなど考慮せずに気分を加えて直訳すると、「世界のすっごいテキスタイル夏フェス」ってところ。
あのミシュランの本社は、このクレモン＝フェランにある。
ここに到着すると、まず、建物の色に驚かされる。火山帯から採取された石による建築でチャコールグレーに染まった街並は、偶然にもタイヤの色にも似ているので、「ミシュランがあるからかこんな色なのか」などと口走ってしまう人も少なくないそうだ。
ヴィクトワール広場にあるチャコールグレーな大聖堂
■テキスタイルアートのビエンナーレ
このフェスティヴァルは同市の主催で２年に一度開催され、今年で３回目を迎える。「反逆者たち」という平和な夏フェスの気分をぶち壊すような反逆的なコンセプト。
「反逆者でいることは、新しい視点を世界に向けること」というスローガンまで抱え、言葉、アート、写真、ビデオを媒介に世界のテキスタイルを探ろうとする試みる。
同フェスは来年、南米に旅をする。
バーゴワン美術館 / Musée Bargoin
REBELLES 展覧会「反逆者たち」
この美術館は1993年から、グローバル化の中で消えて行くヨーロッパの伝統的なテキスタイルを守る、保存する、研究するなどの活動をしているそうだ。
美術館の中は展覧会「反逆者たち」のために、空間、階段、欄干、壁、至るところに毛糸が蜘蛛の巣のように張り巡らされている。
美術館の蜘蛛の糸
第１章では人権を掲げ、インド独立を象徴するマハトマ・ガンディーへのオマージュとして印コットンのアイテム、ネルソン・マンデラが着用したシャツを展示。
第２章は、アーティストたちがテキスタイルを媒介にそれぞれの反逆を表現した作品。
第３章は社会におけるテキスタイルとして、イヴ・サンローランのスモーキング、ジャンポール・ゴルティエのメンズスカート、アンドレ・クレージュのミニスカートを取り上げた。そしてこの章でどかーんと出てくるのが、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク。ステージを設け、06/07AW, 14/15AWのコレクションをインスタレーションした。
ゴルティエ、YSL、クレージュが並ぶ
ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク
エピローグでは、テキスタイルで反人種差別や反植民地化を訴える数々の作品を展示。
FABULA Charles Fréger
シャルル・フレジェ 「ファビュラ」展
バーゴワン美術館をあとに、写真美術館のオテル・フォンフレイド / Hôtel Fontfreyde へ。
写真美術館
ここでは仏人写真家シャルル・フレジェ Charles Fréger （!!!）の ” FABULA / ファビュラ”展が開催されている。
フレジェは、75年ブルージュ生まれ。1999年から一貫して、民族衣装や風習の中でのコスチュームポートレートを撮り続けている。
銀座メゾンエルメスフォーラムで今年2月に開かれた彼の展覧会” YOKAINOSHIMA “は好評を博し、会期延長となったほど。
実際この展覧会を見たのは開催前だったので、作品はまだ床に置かれたまま。フレジェ本人は、「こんな状態で解説するなんて初めて」と恐縮していたが。
シリーズ「ファビュラ」では、アフリカの兵士、ニュージーランドの学生、北京の京劇俳優、ブラジルのお祭りの「ユニフォーム」をピトレスクな、そしてポエティックな写真にしている。次のシリーズが早く見たい、とつい欲が出てしまうほど、ファビュラは面白い。9月24日まで。
「ファビュラ」
驚きの象
インフォメーション
FITE は9月20〜25日にアトリエやファッションショー、テキスタイルのショールームやマルシェなど沢山の特別プログラムでクライマックスを迎える!
地方都市のテキスタイルへの愛情、そして意気込みファスティヴァルの詳細はこちらで。
松井孝予
（今はなき）リクルート・フロムエー、雑誌Switchを経て渡仏。パリで学業に専念、2004年から繊研新聞社パリ通信員。ソムリエになった気分でフレンチ小料理に合うワインを選ぶのが日課。ジャックラッセルテリア（もちろん犬）の家族ライカ家と同居。
