ディディエ・リュド。
その名は、「ヴィンテージの帝王」、とか、「王様」、英語で「キング」とか、フランス語なら「ロワ」など、ヴィンテージの世界で君臨する大物の肩書きを持つ。
その形容は本人の容姿にも通じる。 彼は背が高く、威風堂々とした姿に、セミロングにちょっと足りないほどの黒い巻き毛。 顔は似ていないが、「太陽王」のルイ14世のような光を持っている、なんて言ったら輝き過ぎ?
ディディエ・リュド ©Ali Mahdavi
ディディエ・リュドがパレロワイヤルにヴィンテージのブティックを開いたのは、1975年のこと。
この40年間、彼はブティックのウィンドーを、「シャネル」や「イヴ・サンローラン」、「ディオール」、「プラダ」、「エルメス」、「クレージュ」など、オートクチュールやリュクス/ラグジュアリーメゾンのコレクションで飾り、まるでショーでも見ているかのような、小さな美術館にでもいるような、夢心地の時間を与えてくれる。
パレロワイヤルのブティック イヴ・サンローランのヴィンテージ
彼のブティックは、ここパレロワイヤルにしか存在しない。
世界のヴィンテージファンが、ここに羨望のローブを探しに来る。 レッドカーペットのドレスを探す、ハリウッド女優も多し。
3週間ごとに変わるウィンドーディスプレー
ヴィンテージ界で名高いこのパリジャンが初めて、恵比寿のウェスティンホテルで7月27~29日に開催される「モード・イン・フランス」展20周年で、日本初の展覧会を開催する。 さっそくパレロワイヤルのブティックに赴き、忙しい~ディディエさんにインタヴュー!
これは10年以上前に撮ったウィンドー ヴィンテージ写真!
ーヴィンテージへの情熱が芽生えたのは
それはそれは昔から。 母は洋服が大好きで、わたしはいつも母のショッピングにお供しました。 小さい頃、わたしたちの家族は地方あるとっても大きな家に住んでいて、母のワードローブはもちろん、祖母、大叔母のローブ、祖父のスモーキングなどを保管することができた。
だからヴィンテージのブティックを開いたのは、ロジック、当然のことと言えるのですよ。 まあ、その当時、こんな職業はありませんでしたけどね。
東京展プレヴュー! 4点をここで。 ジャック・グリフ 1954年 ©Robe Didier Ludot
ー東京で初の展覧会ですね、どんなテーマを選びましたか
本当、これまで日本で展覧会をしたことがなかったのですよ。 今年2月にニューヨークで開いたアンドレ・クレージュへのオマージュ展を見たパトリシア(モード・イン・フランス展を主催する仏婦人プレタポルテ連盟の国際ディレクター)から、是非東京でもと提案を受けました。
東京初の展覧会のテーマは、夏。 名高いパリクチュールを、モード・イン・フランス展の20周年を祝い20点セレクト、ジャック・グリフ、ジャック・ファス、ウンガロ、イヴ・サンローランなど象徴的なデザイナーのいろんな年代のローブをミックスしました。
イヴ・サンローラン 60年代 ©Robe Didier Ludot
ーこの20点、展示するだけ? 販売は??
欲しい方がいらっしゃればお譲りしますよ。
ーディディエさんのブティックでいつかヴィンテージを買いたい!と思っている日本人ファンがたくさんいますよ。
(笑)昔から日本から多くの方々がおいでいただいています。プレスでも紹介していただいてるので、わたしの名前を知っている方も多いでしょう。日本人クライアントはシャネルがお好きですね。60年代のカルダンやクレージュのローブを求める方も多い。
彼女たちの(ヴィンテージにおける)アドバンテージは、すらりとしているので、自分に合うサイズのヴィンテージをすぐ見つけることができます。大きなサイズを見つけるのは、難しいのですよ。 アメリカ人は、ジバンシイやバレンシアガを探しに来る。国ごとにそれぞれお気に入りメゾンがあるので、それがまた面白いのですよ。
アザロ 1972年 ©Robe Didier Ludot
ーこれを機に東京進出の計画などは
それは難しい! もしどこかに出店するとしたら、モードに深い教養を持つ人材を見つけるのが大問題なのです。だから日本に限らず世界から、パレロワイヤルのこのブティックにおいでいただきたいのですよ。ここでクライアントが私たちとローブの歴史を語りながら、ヴィンテージを選んでいただきたい。
ーディディエさんによるヴィンテージの定義とは
私にとってヴィンテージとは、
・一切手を加えず、オリジナルの状態であること
・デザイナーの代表的なスタイルであること ・時代を象徴するもの
・コンディションのよいもの
ウンガロ 1992年 ©Robe Didier Ludot
ーディディさんが所持する最も古いピースは
1920年代の何枚かのポール・ポワレのローブ。 古すぎて着るにはちょっと難しいけど(笑)。 だからこれは美術館の展示向けです。
彼のブティックでインタヴューを終え、ふと目に入ったのが、天井から吊り下げられたイヴ・サンローランによる「クリスチャン・ディオール」1959年のウェディングドレス。 ヴィンテージのあまりにもの美しさにこの世を忘れた。
東京へは、シャネル、ディオール、サンローラン、アライア、アレキサンダー・マックイーン、ウンガロなどのヴィンテージが旅をする。 出発前に行われたシューティングに参加してきたので、ここでプレヴューをお楽しみください!
■インフォメーション
モード・イン・フランス 東京展 7月27~29日 ウェスティンホテル東京
松井孝予
(今はなき)リクルート・フロムエー、雑誌Switchを経て渡仏。パリで学業に専念、2004年から繊研新聞社パリ通信員。ソムリエになった気分でフレンチ小料理に合うワインを選ぶのが日課。ジャックラッセルテリア(もちろん犬)の家族ライカ家と同居。