ジャポニスム2018 パリで「見たい絵」
7月にパリを中心にオフィシャル開幕した、日仏友好160周年を記念する一大イベント「ジャポニスム2018、響き合う魂」が秋の深まりとともに、歌舞伎、能、文楽をはじめとする伝統芸能から、野田秀樹、テクノから初音ミクのコンサート、安藤忠雄展と計り知れない驚きのある素晴らしいプログラムを展開しています。そのハイライトの一つ、伊藤若冲展がパリのパリ市立プティ・パレ美術館で開催されています。
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「若冲ー<動植綵絵>を中心に」展
JAKUCHU, LE ROYAUME COLORE DES ETRES VIVANTS /@Petit Palais
火水木 10時~18時
金曜日 10時~21時
土日 10時~20時
10月14日まで
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日本人が一番見たい絵を選ぶなら、東洋なら伊藤若冲(1716ー1800)、そして西洋ならフェルメールなのでは。
今更ここで「若冲は凄い」という主張をベラベラと広げる必要はありませんよね。
ここでお伝えしたいのは、ヨーロッパで初公開となるこの若冲展の概要。展示されている作品は、宮内庁三の丸尚蔵館蔵『動植綵絵』全30幅と相国寺蔵『釈迦三尊像』3幅。キュレーターは宮内庁三の丸尚蔵館主任研究官の太田彩氏と、パリ市立チェルヌスキ美術館日本美術担当のマヌエラ・モスカティエッロ氏。
今回はジャポニスム2018の一環として、宮内庁からこれらの作品の貸し出しが特別に許可されました。
エツコ&ジョープライスコレクションが『葡萄図』『虎図』などの若冲の代表作を所有していることもあり、米国では知られているこの日本画家。でもフランスでは知名度が低いという背景から(でもこれからパリで若冲ブームは必ず到来するでしょう)、「長蛇」を免れ若冲を鑑賞できます。
パリで若冲が驚かれている点は、修復作業を終え200年経っても美しい裏彩色(うらざいしき/絵絹の裏側から彩色して深みをだす)絹地着色画、掛け軸の日本の技法と様式。そして主題。18世紀のフランスは、デカダン(退廃的)で且つふんわりした華やかさの、ヴァトーやブーシェに代表されるロココ絵画ですから、「動植物」のテーマがとても新鮮。そこで若冲と鶏の関係を知りたくなってしまうのですが、辻惟雄著『若冲』に、若冲の画技習得の過程を述べた大典(若冲と深い交流のあった相国寺の高僧)の文の読解が記されていました。
それをさらに掻い摘むと、若冲は狩野氏の絵を超えることができないだろうと、宗元画を学ぶが宗元の名手にも勝てないと諦め、何を描こうか悩んだ末、動物に行きついたが、孔雀や鸚鵡は身近にいない。ただ鶏は村里で馴染みの深いものだし、その羽毛は5色できらびやかさを持っている。自分はこれから始めようと悟り、数十羽の鶏を飼い、写生に努力を重ねたそうです。
どのような努力であのような芸術の域に達したのか。ますます嵌ってしまう画家、若冲。
「京都の宝ー琳派300年の創造」展 / TRESORS DE KYOTO TROIS SIECLES DE CREATION RINPA
パリ市立チュルヌスキ美術館 / MUSEE CERNUSCHI
10月26日~2019年1月27日まで
桃山時代後期に京都で生まれた琳派。この展覧会では京都での創造にフォーカスし、日本でもめったに公開されない琳派の傑作が絵画から調度品にわたり展示されます。
ヨーロッパ初公開、国宝俵屋宗達筆「風神雷神図屏風」をパリで鑑賞できる、またとない機会。
香取慎吾 初の個展 NAKAMA des Arts
「アートで仲間と繋がりたい」をコンセプトに香取慎吾さんの初の個展が、10月3日までカルーゼル・デュ・ルーヴル(パリレディス合同展トラノイの会場のお隣、シャルル5世ホール)で開催されていました(会期が過ぎてしまい、「見たい絵」ではなく、「見たかった絵」になってしまいました)。
この展覧会のために制作した絵画『嘘、ありがとう』、カルティエの「タンク」誕生100周年を記念して制作した2作品、キャンバスを文字盤に見立てたエンターテイメントのように何か飛び出して来そうな絵画『時間が足りない』、そして息を吹きかけてみたくなるローソクのオブジェ『百年のfuuu.』。およそ1000個の頭巾ならなるドームのインスタレーションにコートなど様々な手段で、カラダから溢れでてくる「描きたい」「創りたい」を表現。見学者たちが作品と楽しんでいる姿もとても印象的でした。子供たちが、歯が描かれた作品の前で、大口開けて真似してたり。こんな直感的な反応を失わずに大人になってほしいですね。
ところで香取慎吾さんは、ジャポニスム2018の広報大使でもあります。
パリ日本文化会館で、香取さんの個展のレセプションと、野村萬斎さんをお迎えしての鏡開が開かれました。
「本当に幸せです。幸せに溢れかえっています。子供の頃から絵を描くのが好きで、学校で絵を勉強したことはなのですが、兎に角、ずっと描き続けてきました。描いている以上は人に見てもらって、いいねって、言って欲しくて。こんな思いでいつか個展をやりたかったのですが、それがまさかパリのルーヴルで、一度きりの人生の初の個展を開催できることを皆さんに感謝しています」と香取さん感激のスピーチ。
個展に続き、香取広報大使の活躍が楽しみ。
松井孝予
(今はなき)リクルート・フロムエー、雑誌Switchを経て渡仏。パリで学業に専念、2004年から繊研新聞社パリ通信員。ソムリエになった気分でフレンチ小料理に合うワインを選ぶのが日課。ジャックラッセルテリア(もちろん犬)の家族ライカ家と同居。