「彼女」って誰?
ポーランドの貴族の末裔。パパは仏『ヴォーグ』の元ディレクター。ママはインテリアデザイナー。姉のマリーはパリ左岸のジュエリーブランド「ストーン・パリ」のデザイナー。夫は仏人人気歌手。
これからご紹介する「彼女」の家族にまつわるプロフィールなのですが、お家柄から結婚相手まで、すごいですね。そうそう、あのイネス・ド・ラ・フレサンジュの次、つまり「ポスト」パリジェンヌの有力候補とも言われています。その彼女とは、一体誰なのでしょう?
サラ・ラヴォワンヌ Sarah Lavoine
ちなみに夫の名はブルーの瞳がステキすぎるマーク・ラヴォワンヌ。このふたりの間には子供が3人。カップルでよく「ボンポワン」のショーの最前列にいたけどな。子供が大きくなったのか、ショーで見かけなくなりました。サラのメティエ(職業)はママと同じインテリアデザイナー。彼女をコラボレーターにこの5月リニューアルオープンした仏百貨店プランタン・メゾン。大成功でした。
サラは東京・青山の「エルカフェ」のクリエイティヴディレクターでもあります。インテリアデザイナーなのですが、とてもチャーミングなルックスということもあり、メディアではかなりの露出度。例えば『マダム・フィガロ』やファッションマガジンのカバーガールにもなりました。
「我が家へようこそ」がコンセプトのMSL
さて、自分の名前にブランド力を付けたサラがライフスタイルのフラッグショップをオープンさせました。いや、ショップと呼べないですね。実際ここを体験すれば分かるのですが、その名が示す通り、メゾン・サラ・ラヴォワンヌ/Maison Sarah Lavoine、略してMSL! サラのメゾン(家)です。
場所は、ヴィクトワール広場の6番地。ラグジュアリーなアドレスです、ねっ。サラはこのメゾンについて、「まるで新しい我が家に引っ越して来た、そんな感覚。新しい場所、新しい経験、新たな挑戦。キラキラと輝きを放ち、よいエネルギーが満たされてくる、そんな気持ちをそのまま表現したような、そんな我が家に」と話しています。
コンセプトは、「私の家に招かれたような気持ちになって」。シンプルな発想ですが、これを「店舗」にするのはなかなか難しいですよね。ここにはサラがデザインした食器・インテリア雑貨、家具、ウェア、ファッション雑貨、そして彼女が一目惚れてしたライフスタイルにまつわるモノがいっぱい。「宝石箱のようなメゾン」とサラは表現しています。
お勝手口からどうぞ
MSLのいわゆる正面玄関はヴィクトワール広場に面しているのですが、この広場の裏手、プティ・ペール通にあるもうひとつの扉、サラ・ラヴォワンヌのメゾンカラー「ブルー・サラ」に塗られた「お勝手口」(筆者が勝手にこう呼んでます)から入ると、「あ、サラの家に来たな」と感じます。
ツーリストなら「わたし、パリに住んでいる」という和やかな錯覚を起こすかも。不思議です。
それではなぜ「お勝手口」と名付けたかというと、そこにはカフェがあるから。マレに本店を構える「テール・ドゥ・カフェ」のカフェ、「シュペット・ドゥ・シュシュ」のスイーツ、常に変わるメニューが、ここのカフェで味わえます。食べたり、飲んだりすることででサラ家の匂いに親しむ、といったところでしょうか。
ここにはパスタソースや野生のハーブティー、コンフィチュール、オーガニック素材などの「食」をセレクトしたキッチンスペースも。そのお隣には、「招待された」気分にさせられるテーブルセッティングがされたダイニングルーム。
自分でも誰かを招きお料理を見せたくなる気分にさせられるのですが、そこにはサラのオリジナルアイテムの食器やクリエイターのテーブル用品が揃っていて、ビジネスに繋がっています(当たり前ですよね)。
「上がっておいでよ」と、呼ばれたような気分
階段を上がるとまずはサラ・ブルーのサロン。ミラー、ソファー、カーペットとサラのファニチャーでくつろげます。
そしてビブリオテーク(書斎)。実際売り物なのですが、アート、フォト、アーキテクチャー、モード、シネマ、トラベルなどの書籍がいろいろあって楽しい。
MSLのプライオリティーはベッドルームにあるらしく、一番目立っているかも。
グリーン、イエロー、ブルー、幾何学模様にストライプと、サラのセンスが光るアイテムがラグジュアリーホテルのベッドルームのようにディスプレーされています。壁には彼女の定番でお米一粒一粒からインスパイアされた「時が止まる瞬間」と名付けられた陶器のオブジェが飾られています。
ドレッシングルームには、100%カシミヤセーター「サラ」、アンダーウェアのパリブランド「ブレックファーストクラブ」、パリジェンヌに大人気の「セザンヌ」の靴、「マルセル」とコラボレーションしたウィークエンド用のバックなど「彼女」と「彼」のアイテムが揃っています。
ここの窓からは、戦勝(ヴィクトワール)を記念したルイ14世の騎馬像が置かれたヴィクトワール広場の眺めが美しい。「自分の家にいるような気分になってきたかしら?」と、サラが微笑みます。もしそんな気分だったら、イベントやパーティーなどの多目的レンタルスペースとしても使えるそう。
アール・ド・ヴィーヴル / Art de vivre 「生きる術」とか、「暮らしの芸術」などと訳されるこのフランス語。英語だったらライフスタイル。ラグジュアリー産業しかり、フランスの得意技「アール・ド・ヴィーヴル」というものをこのMSLでどうぞ。
【インフォメーション】
松井孝予
(今はなき)リクルート・フロムエー、雑誌Switchを経て渡仏。パリで学業に専念、2004年から繊研新聞社パリ通信員。ソムリエになった気分でフレンチ小料理に合うワインを選ぶのが日課。ジャックラッセルテリア(もちろん犬)の家族ライカ家と同居。