レディスバッグ市場は厳しい状況が続いている。百貨店向けが平場の縮小などの影響も加わり、売り上げ確保が大きな課題になっている。特にインポートやライセンスブランドに依存する傾向が強く、日本ブランドが少ない。今後、日本のオリジナルブランドが徐々に増えていくことが市場活性化につながっていくと考える。
(武田学=東京編集部ファッショングッズ担当)
売り場が縮小、分散化
レディスバッグは、他のファッション市況と同様にここ数年低調で、使いたい時期にしか買わない傾向が強まっている。また、小ぶり化やカジュアル化などで単価が低くなっている。異業種のバッグの扱いがさらに増え、あらゆる小売り業態がバッグを扱うようになった。供給ルートが多様化して需要が分散化しており、バッグ業界がつかんでいる需要は、相対的に縮小していると思われる。
特に目立つのが百貨店売り場の縮小だ。1階を中心とした服飾雑貨の売り場は好調な化粧品売り場に押されているのが実情。せばまるのは平場だ。平場はライセンスブランドが主体で、国内卸企業が供給元だ。特に大都市中心部のバッグ売り場はラグジュアリーなど力のあるブランドのインショップやコーナーだけになっているところが多く、純粋な平場がない店も増えている。また、平場を縮小するだけでなく、売り場を2階などの上層階に上げたり、服飾雑貨の売り場を分割するなど売り上げを維持するには厳しい環境になっている。
そうした中、バッグ卸は販路の確保に生き残りをかけている。多くがバッグと財布などの小物を手掛けているが、百貨店では財布売り場はまだ平場を残している店が多く、結果として財布などの小物にシフトすることになる。多くが売り上げを財布などの小物に依存するようになっている。
百貨店以外で有力なチェーン専門店は東京デリカや一部の地域チェーン店に絞られており、開拓の余地は大きくない。簡単ではないが、直営店展開も選択肢の一つだ。ECやOEM(相手先ブランドによる生産)を拡大することも、売り上げを確保する主要な対策になっている。
後れ取るブランド開発
期待されるのは自社ブランドの育成だ。レディスバッグではアパレルなどと比べても有力な日本ブランドが非常に少ない。「サマンサタバサ」や「ゲンテン」「サザビー」「ラシット」など一部に限られており、ファッション分野の中でもとくに海外やライセンスブランドに偏りすぎているのが実態だ。メンズバッグ・小物と比較しても少ない。バブル期までの市場拡大が女性のブランド志向の強さに支えられて形成されたと考えられるが、その後も海外ブランド依存が強かったことを反映している。特にメーカーや卸は消費者への〝売り〟を小売業に依存してきた印象が強く、物作りから販売、ファン作りまでのトータルなブランド開発が遅れてきたのではないだろうか。
ただ、少ないながらも日本のブランドとして一定の規模を維持できていたり、成長しているものもある。理由としてまずは商品力やブランド特性が挙げられる。「ゲンテン」(クイーポ)や「エポイ」(アジオカ)などは国産や日本型の物作りの技術を生かした商品力が支持されている。「カナナプロジェクト」(エース)はトラベルの切り口で機能性や使い勝手の良さといった特徴が鮮明でファンを根付かせた。「ダコタ」(プリンセストラヤ)はナチュラルなカジュアル企画を一貫させてきたことで存在感が出てきた。
さらにモノの良さと特徴がどれだけ消費者に浸透するかが欠かせない。ブランディングとマーケット作りだ。土屋鞄製造所やスタジオアタオは、ECなどのネットや直営店を活用したブランディングや独自の販路政策でイメージ浸透や顧客の拡大につなげている。「ルートート」(スーパープランニング)はトートバッグ専門ブランドで、卸主体ではあるがCSR(企業の社会的責任)とブランディングを兼ねた社会貢献活動やイベントなどでブランドファンを広げている。
オリジナルの育成には時間がかかるが、日本の物作りのレベルの高さに見合ったブランドの広がりに期待したい。
(繊研新聞本紙19年8月19日付)