コロナ禍が沈静化し、国内のテキスタイル産地が連携を深めている。ウールの尾州産地に、デニムの備後産地(広島県)とシルクや合繊の富士吉田産地(山梨県)の企業が集まり交流イベントを開いたほか、秋に各産地で開くイベントでの連携も視野に入れる。
組合主体の産地交流は今までもあったが、産地の若手有志が独自に相互交流を図るケースは少なかった。6月に尾州で開いた交流イベントには備後から10人、富士吉田から5人が訪れ、東京クリエイティブサロン実行委員会のメンバーも参加した。きっかけは、尾州の岩田真吾三星毛糸社長が備後で講演したこと。「産地間で何かできたら」との思いから岩田社長が声をかけ実現した。
イベントでは尾州が産業観光イベント「ひつじサミット尾州」を、富士吉田がアートと産業を掛け合わせた「フジテキスタイルウィーク」を、備後が産地活性プロジェクト「デニムのイトグチ」を紹介した。イベントのノウハウを共有や、生地サンプルの保管方法など具体的な相談、アドバイスも交わされた。その後は三星毛糸、生地染めの艶清興業、かせ染めの伴染工、ジャージーの宮田毛織工業の各工場を回り、尾州の技術を見学した。
備後の篠原テキスタイルの篠原由起社長は「ここ5年間で産地間交流はなかったのでは」と振り返る。デニムのイトグチのリーダーを務める湯浅遼太さんは「尾州の多様な糸、色、織り組織は圧巻。無駄にならないように生産する姿勢にも驚いた。備後のメンバーで経験を共有し、自分たちのイベントに生かしたり連携したりしていきたい」と話した。