「タイガタカハシ」のデザイナーで、現代美術家として活動した故髙橋大雅の初個展「不在のなかの存在」が、京都市の建仁寺塔頭(たっちゅう)の両足院で開かれている。12月11日まで。
4月22日に他界した髙橋は、ニューヨークを拠点としながら建仁寺に度々通い、クリエイションに向き合うなかで影響を受けていた。両足院の副住職とは親交があり、生前に本展の構想を進めていた。実現にあたって「極楽浄土」「髙橋大雅への供養」を込めた。
制作の出発点は、髙橋が秋篠寺に安置されていた伝救脱菩薩立像の布のドレープに魅了され、遺品の衣紋を購入したこと。西洋・東洋の古典的な彫刻のドレープの表現を広く考察するようになったという。髙橋は「人体にかぶせた布地の壁がうねっている。そこにあるのは、現実と虚像(写実性と抽象性)が共存する世界。ドレープとは、古代から現代にかけて共通して美を認識することができる伝統的な表現」というメッセージを残している。両足院の方丈の間には石膏(せっこう)やブロンズなどの彫刻を、庭園には石彫家・故和泉正敏氏と共同制作した石像を展示している。

同時に、総合芸術空間「T.T」では、タイガタカハシのアーカイブなどを展示する「時をうつす鏡」も開催。西陣の細尾が運営するホソオギャラリーでは23年3月12日まで、髙橋が収集した1900年代初頭の服飾資料を公開する特別展も行っている。