《名店オーナーが見据えるコロナvsファッション消費》イシカワラボ 石川英章社長

2020/06/15 06:28 更新


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 静岡県三島市のレディスセレクトショップ、イシカワラボはコロナ禍の最中にあっても好調だ。店舗面積60平方メートルの地方路面店は今年、1~4月の最高売上高を更新した。特に、4月は売り上げが1100万円を超えて前年同月比38%増となった。販売が伸びた主な要因はネット販売の確立だ。11年に倒産寸前だった家業を引き継いだ3代目が、年商1億円を超える売り上げを作ろうとしている。

(北川民夫)

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 当店は4月の緊急事態宣言以降、通常営業を自粛して、従来の午前11時~午後6時の営業時間を午後4時までに短縮しました。来店する顧客の感染防止のために、完全予約制に切り替えました。コロナ禍で、実店舗の売上高は前年比4掛けの水準にダウンしています。ネット販売は今年4月から大きく伸びて870万円、前年比で10倍の売り上げを記録しました。2年前から〝売り上げよりも利益を残す〟経営に大きく舵(かじ)を切り、ネット販売の強化に取り組んできたことが、今回のコロナ禍の状況で経営を助ける形になりました。

ネットでも〝対面〟

 ネット販売の飛躍の要因は専属スタッフを今年1月から増員して、サービスを拡充したことにあります。具体的には現在、週2回、約1時間のインスタライブを行っており、30~50代を中心に200~300人ほどのお客様に向けて配信しています。インスタライブではバイイングを担当する妻(ひとみさん)が、ショップで扱う商品を使ってコーディネートして、自らモデルとなって商品説明を行います。また、ネットを通じた購買方法の詳細については私が説明します。インスタライブを終えた後もお客様からの個別のダイレクトメッセージに対応し、丁寧な説明を心掛けています。ここで改めて感じるのは、ネット上においても〝対面販売〟を意識した個別の接客が大事だということです。

 このネット販売は当初の想定以上に反響があり、私たちのイシカワラボが北海道から沖縄まで全国のお客様に喜んでいただけるという手応えを感じています。

30~40代の顧客が多い

かなりの効率化

 コロナ禍を通じて得た教訓として、ズームやインターネットを活用すれば、かなりの業務効率化が図れるということに気付きました。展示会もオンラインでオーダーしていても何の問題もないことや、追加発注のやり取りもメールやSNSで問題ないことが実感として分かりました。

 もちろん、展示会に実際に足を運んで商品の風合いを確認したり、アパレルメーカーの営業担当と直接会話しながらオーダーするのがベストであり、本来のやり方だとは私たちも考えています。しかし、それだけにこだわっていると、コロナ禍でオーダーができず、店が存続できないことになります。従来のこだわりは捨てて、発想の柔軟性やスピード感を重視して常に変化し続けることが大事だと私は考えます。

10回の挑戦から

 当店は創業67年を迎える老舗専門店ですが、私たち夫婦が家業に入った11年ごろには、経営が非常に厳しくなっていました。しかし、3代目として私が引き継いで以降、現在に至るまで常に売上高を伸ばしてきました。なぜそれが可能だったかと言えば、変な思い込みがなかったことや、前向きな発想を常に持ち続けてきたからだと考えています。

 もう一つは失敗を恐れずに行動やチャレンジし続けたこと。周りの人間はどうしても失敗をとがめたがります。成功を得るには10回のチャレンジがあって、初めて1回の成功があるのです。ただし、何も考えずに行動するのはダメです。やはりしっかり分析して、計画して、行動するという段階を踏み、チャレンジの回数を増やすことが大切だと思います。

石川社長と妻でバイイング担当のひとみさん

既存捨てる勇気

 経営の軸となっている考え方は、「どうすればお客様に喜んでもらえるか」です。そして、これを突き詰めると「全てのお客様をターゲットにはできない」という結論に達しました。「自分たちのお店を通じて、一番喜んでもらえるお客様はどういう層なのか」を真剣に考えています。理想のお客様とお付き合いができるからこそ我々もやる気が出てきて元気も出て、仕事が楽しくなるのです。それが当店の先代の持っていた顧客層のままだったら、やはり私たちのモチベーションは上がりません。「全てのお客様を大事にする」といったような奇麗ごとを並べて、地方でお店をダメにしている例がたくさんあるような気がします。

 まずは捨てることが大事です。そして理想の客層を考えて、自分たちの力がその客層に喜んでいただける力を持っているかを真剣に考えていくことが、これからのセレクトショップの運営には絶対的に重要になってくると私たちは考えています。

 小さい店だからこそやれること。そんなピリッと辛い店が地方に増えていくことがファッション業界の未来を明るくすると私たちは考えています。

石川英章社長

(繊研新聞本紙20年5月20日付)

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