スタッツがショールーミングストア開始 ゴルフ場でOMO 売り場の感度向上、富裕層へ訴求

2021/07/12 06:28 更新


 ゴルフウェアメーカーのスタッツ(東京)が、ゴルフ場にショールーミングストアを出している。ゴルフ場に在庫情報を開示し、ゴルファーから注文を受け付け、発送する仕組みだ。ゴルフ場は在庫を抱えるリスクを減らしながら感度の高い商品を幅広く見せることができる一方、スタッツは富裕層が集うハイエンドな施設でブランドのイメージアップを期待できる。ゴルフ場を通じたOMO(オンラインとオフラインの融合)店舗として注目される。

(杉江潤平)

おしゃれ空間に

 カレドニアン・ゴルフクラブ(千葉県横芝光町)は2月、クラブハウス内に「スタッツショールーミングストア」(SSS)を導入した。陳列されているのは約40点の商品で、パンツの「トラット」、シャツの「モコ」など、スタッツが企画・製造する単品アイテム特化の高品質なメンズブランドだ。

ショールーミングストアのイメージ

 商品を気に入ったゴルファーは、ストアから5㍍ほど離れたフロントにサンプルを持ち込み、欲しい色とサイズを伝える。フロントスタッフは、スタッツのシステムを利用して在庫を確認。要望されたものがあれば、その場で発注し、客の自宅またはゴルフ場への商品発送を指示し、決済する流れだ。

 同店は月に30万から40万円を売り上げる。総支配人の渋谷康治常務取締役は、「ほぼセルフ販売にもかかわらずコンスタントに商品が売れている。SSSを入れたことで売店がゆったりと奇麗な空間に様変わりし、クラブのメンバーさんも皆、喜んでいる」と笑う。

店舗では、単品コーディネートのしやすい機能的でファッション性の高いスタッツの商品を編集・提案する。平均価格は約2万円

VMDのサポートも

 ゴルフ場内にあるショップでのアパレル販売は、課題を抱えている。多くのゴルフ場ではゴルフウェアとそのトレンドを熟知した専門スタッフがおらず、精度の高い仕入れと販売ができず、ゴルファーの満足度を高めづらい。また、思い切って品揃えを充実させても、在庫過多に陥りやすく収益を圧迫してしまう。しかし、ボールなどの消耗品を扱うだけでは他のゴルフ場との差別化が難しい。

 そこでスタッツではショールーミングストアの仕組みを、ゴルフ場向けにカスタマイズしてみた。ゴルフ場と相談をしながら品揃えをスタッツ側が主導し、1シーズンあたり2回程度、VMDの支援にも入り、売り場を統一感のあるおしゃれな空間に切り替える。

 この仕組みは、スタッツ側のメリットも大きい。ゴルフ場は販売員を常駐させる必要がないため、掛け率は一般的な水準よりも高い70%に設定でき、家賃もかからない。さらに出店先はハイエンドなゴルフクラブに限定していることから、富裕層にはスタッツのブランドイメージを高く認知してもらいやすく、宣伝効果を期待できる。

 スタッツはSSSを2月にスタートし、5月までに12のゴルフクラブに広げた。1カ所ごとの商品展開数に差はあるものの、多いところでは月に50万円近くを売り上げる。

定期的にVMDも支援し、ゆったりと統一感ある売り場を作り出す。下はビフォー、上はアフター(いずれもカレドニアン・ゴルフクラブ)

プラットフォームに

 スタッツでは今後も、SSSの出店を続ける。ターゲットはラグジュアリーな雰囲気を持つチェーン化されていないゴルフクラブだ。現在、日本には約2200のゴルフ場があるが、そのうちの50コースが対象になり得ると見ている。ちなみに、1店あたりの月売り上げは30万円を見込む。

 出店と同時に、取り扱い品目も増やす。レディスアパレルやアメニティーグッズ、土産品など、スタッツ製品に限らず立地に応じてアイテムを変更・拡充する。スタッツの片山良二社長は、「SSSがプラットフォームとなり、良質なゴルファーと独自性の高いメーカーをつなぐ役割を果たせるようになりたい」と話す。

在庫確認や発注、決済はゴルフ場側が担う

ゴルフ場の声 クラブの務め果たせる

■カレドニアン・ゴルフクラブ・渋谷康治総支配人

 我々のようなメンバーシップコースのゴルフ場は、会員の満足度を高めることが命題。そのためにはメンバーの関心事に合わせて、モノやサービスの選択肢を多く用意することが、ゴルフ場経営会社の務めだと思っています。

 ただ正直に言うと、我々としてショップにそこまで手間をかけることはできません。たとえ色々なブランドの商品を集められても、売り場を綺麗に統一感あるものにできないことが悩みでした。

 SSSは、商品をゆったりと見せてくれるうえ、ゴルフ場の雰囲気に合わせて売り場を作ってくれるので助かっています。我々にとってリスクが少なく、楽に運営できるのもうれしいですね。

 今後、売れた商品の中から、当クラブのオリジナル品を作ってもらえればありがたいです。売れ筋の別注品となれば、購入されるメンバーも多いと思います。

渋谷総支配人

(繊研新聞本紙21年5月28日付)

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