中国のシャオバイチュー(湖南省、彭杜平社長)は、ユーザーがタッチパネルに身長と体重を入力するだけでAI(人工知能)がサイズを推計し、オーダースーツを20日以内に届ける事業を日本で始める。1畳ほどの注文什器を商業施設やホテル、ジムなどに設置、時間のないビジネスマンの需要を掘り起こす。中高級価格帯のため、決済は納品時にして購入ハードルを下げる。返品も無料で受ける。身長と体重の入力のみでぴったりのスーツを提供出来るのは世界でも同社だけという。
同社は、中国でアミューズメント事業を手掛ける。すでに中国ではEC展開しているが、オフライン型は日本が初めて。紳士服ブランド「SO」の名前で始める。身長、体重の入力に加え、ぽっこりなどおなかの形を選ぶだけで、独自のアルゴリズムが各部位のデータを計算、中国のデータセンターに転送。数値を微調整し、山東省のパートナー工場で製品化する。
中国で事業を始める際に無料券を配り、先行して実証実験。身長・体重で生成されたスーツで検証と修正を繰り返し完成させた。日本では、JIS(日本産業規格)を含めた日本人のデータをAIに学習させ、彭社長が見つけ出した関数が数値を微調整するという。
「売りはコスパの高さ」と彭社長。家賃や職人などの人的コストも軽く、職人の技術レベルも問わない。「老舗のテーラーも顧客に合ったスーツは作れるが、コスト差は明らか」。同じ生地であれば、他社のオーダースーツに比べ、半額近い価格という。生地はイタリアの「マルゾーニ」など260種類を用意している。
税込み6万5000~9万円、ベスト付きの3点セットは8万~12万円。シルエットを含め細かな仕様を無料で選べる。出来栄えに不満がある場合は無条件で返品できるようにした。中国では返品例はないという。
設置先の営業はこれからで、10月に都内の合同展に出展、大手商業施設などと商談の機会を持ちたい考え。他にも、高級ジムやオフィスビル、タワーマンションなどへも売り込む。彭社長は「見た目にこだわるビジネスマンがターゲット。時間もお金も節約できるメリットは大きいはず。自分仕様が好まれる時代の流れを商機にしたい。中国に比べ、オーダースーツの文化が長い日本で勝負し、その後の世界展開も視野に入れている。〝服×AI〟には可能性を感じている。自分が見つけた計算式を当てはめれば他にも使えるはずだ」と話す。
(永松浩介)