「推しが新曲をリリースするから、イベントやCD購入のために食費と交通費を節約している」「失敗したくないから、購入前に色んな情報をチェックし、自分なりに悩み切ってから購入する」。普段アラウンド20(15~24歳の男女)と接していると、言葉の端々から彼らの消費価値観やお金の使い方の特徴を感じるシーンが多々あります。
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強い貯蓄意識
シブヤ109ラボで18~24歳の学生男女400人を対象に実施した「若者のお金に対する意識・実態調査」でも、彼らの堅実さとその裏に隠れている消費へのモチベーションが顕著に表れました。
今のアラウンド20の消費価値観の特徴の一つに、「自分が価値を感じたものに対してお金をつぎ込み、それ以外はできる限り節約する」があります。シブヤ109ラボではこれを「メリハリ消費」と呼んでいますが、彼らには関心の低いカテゴリーにおける無駄遣いや衝動買いによる浪費を回避し、「自分にとって本当に価値のあるもの」に対してお金を使いたいという意識が根底にあります。そのため、事前の情報収集などの「価値を見極める工程」に時間をかける傾向にあるのです。
今回の調査結果では、75.8%が「お金は極力無駄遣いせずにためておきたい」と回答する結果となりました。
実際に普段からポイントをためる習慣があったり、コロナ禍の影響で交際費の支出が減った分を貯金に回すようになったりと、貯蓄意識が強い実態がみられています。
時代背景が影響
消費に慎重な態度も見られますが、彼らが「無駄遣い」を避けたい理由は、皆さんの想像と少し異なるかもしれません。
グループインタビューでは、貯金の使い道について「旅行に行きたいとか、何か大きな出費があるときのため」「留学など、自分にチャンスが回ってきた時にお金が出せるようにしたい」「パソコンなど、すごく欲しいけど高額なものがあった時に、貯金から支払えるようにするため」などの声が聞かれています。
彼らにとって貯金は10年後、20年後といった遠い将来を見据えた堅実なものというよりも、近い将来自分が価値を感じたモノやコトに対してすぐに飛びつくことができる原資という感覚の方が強いのです。
また、彼らは無駄な支出を避けるため、貯金以外にも様々な工夫をしています。例えばインスタグラムで「〝手取り○万円のOLの生活〟」や「大学生の着回し術」などの投稿で無駄な出費を抑える節約術をチェックしたり、アプリや手帳を活用し家計簿をつけるなど、日常的に節約を意識した行動をとっています。
インタビューでも、「自分が何にどのくらいお金を使っているのかを〝見える化〟することで、日々の支出の見直しを行っている」という実態も聞かれました。家計簿を記録する理由として多く挙げられたのが「浪費癖を直すため」。彼らにとって、理由や価値のない浪費は〝悪〟であり、大きなストレスであることも感じられます。
以前このよう実態を弊社内で共有した際に、今のアラウンド20の親世代である50代の方から「バブル全盛期の消費の基準は〝ステータス〟で、むしろ消費が美徳となっていた時代だった」と聞いたことがあります。
これに対して子の世代である今のアラウンド20は不況がデフォルトでありながら、モノにあふれかえる環境で生まれ育ち、SNSの膨大な情報を武器にして、価値を吟味し慎重に消費しています。生まれ育った時代背景が消費価値観に与える影響の強さを、改めて感じました。