「若者はタイパを重視する」という論説は、様々なメディアでよく目にします。たしかに若者と日々接していると、彼らが常に様々な情報に触れながら、学校、バイト、サークルに就活…と非常に忙しい日々を過ごしている印象を受けます。
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無意識の「タイパ」
8月に実施した調査では、15~24歳の学生461人のうち「効率的な時間の過ごし方をしたい」という質問に「あてはまる」という回答した学生8割程度となりました。一方で、「自分が大切だと思う事柄には時間をかけたい」という質問では、「あてはまる」という回答も8割程度となりました。
常に情報・コンテンツ過多な環境に生まれ育ってきた彼らは、自分が価値を感じる時間を確保するため、知識や情報を得るためのコンテンツを2倍速以上のスピードで倍速視聴したり、iPadを使用して移動時間中に学校の課題を進めたりなど、様々なデバイス・ツールを駆使して時短している実態が見られています。
しかしこれは「タイパ」を意識して行ったことではなく、ほとんど無意識に行っているようで、「タイパ」という言葉を日常的に使う若者は約2割にとどまりました。
デジタルから距離
一方で、彼らがこうして捻出した時間を何に充てていきたいのか深掘りしてみると、約7割の若者が「何もしない時間がほしい」と回答しました。
こちらについても深掘りしたところ、「何もしない」と言いつつも「SNS」「スマホ」などスマートフォンに関連するワードが目立ちました。
一見すると矛盾しているようですが、その半面インタビューでは「デジタルデトックスしたい」という意見も多く、このことから情報やコミュニケーションが飛び交うスマホの喧噪(けんそう)を離れ、デジタルデバイスから一定の距離取っていきたいという意識が見られます。
実際に24年の若者トレンドには、「自然界隈(かいわい)」「蚤(のみ)の市」「レコードカフェ」など、スマホを離れてデジタルデトックスをしに行く体験が多数観測されています。
これらの事象について、シブヤ109ラボは、コロナ明けに急激に増えたコミュニケーションとコンテンツ量に対する反動で、「効率的にこなす」ことから一時的に距離を置きたいという意識の高まっていることが関係していると分析しています。
効率化する手段にあふれ、常に社会とつながっていることが当たり前である若者。だからこそ、ハイスピードなデジタル社会との適切な距離感を模索し、本格的なデジタルウェルビーイングの実現に目を向け始めているのではないでしょうか。