オリジナルのボディーがクリエイションの精度を高める――。25年4月に創業した東京ドレスフォーム(東京、小泉文子社長)は、裁断用ボディーやディスプレー用ボディーのオーダーメイドを専門にする企業。ファッションが多様化し、作り手のこだわる体の線が一様ではなくなる中で、イメージに沿った土台を作り、服作りの可能性を広げている。
(須田渉美)
細かい部分まで
「鎖骨や肩甲骨といった凹凸がリアルに出ている(同社の)ヌードボディーを使うようになり、モデル着用時との落差がなくなり、トワルの大きな修正を防げるようになった。制作の効率が上がった」と話すのは、「アキラナカ」のチーフパタンナーの北村悦子さん。
北村さんは、東京ドレスフォームの小泉社長が大手ボディーメーカーのキイヤに在職していた20年末、裁断用ボディーのオーダーメイドを依頼した。「ボディーの製造工程を自分の目で確かめたい、世界でもまれな職人がどうやって作るのか、技術を理解して他の人にも伝えたい」という好奇心からだった。
ただ、他者が注文したボディーの製造工程を撮影するのは現実的ではないと考え、取材を兼ねて個人オーダーした。「長年使っていたヌードボディーを更に使いやすく、自分に合ったものに改善したい」と。
その時の原型師が、後に小泉さんと共に東京ドレスフォームを立ち上げた鶉雄次郎さん。北村さんが意識していなかった細かい部分までヒアリングし、フォルムを導き出す。その後、過去に作られた複数の原型を輪切りにして組み合わせ、手作業で調整しながらオリジナルの原型を制作する。

北村さんがこだわったのは、デコルテと肩甲骨の凹凸、横から見た時の流れる曲線のシルエットだ。アキラナカらしい「リラックスした大人のエレガンスを感じる」要素になる。
既存のボディーは、はと胸型がほとんどで、仕上がりをイメージしにくかった。パワーショルダーのジャケットを作るのも難しい。「男性用のボディーを使ってトワルを組むと、女性のきゃしゃな体に合わせた際にしわや型崩れが生じてしまう。ショルダーラインを真っすぐに保てるよう、大きく直す」苦労があった。
〝たたずまい〟感じる
そうした改善点を踏まえて22年に実現したのがAllure(アリュール)だ。当初は北村さん個人用だったが、アキラナカの社内でも使いたいと2体を購入。その存在は社内の意識の共有につながった。「ブランドの原型を立体で捉えられ、軸がぶれず、パタンナーチームのスキルも格段に上がった」
その後、東京ドレスフォームの設立とともに、ヌードボディーをベースに、展示会に使うディスプレー用ボディーを作ることになった。そのままではなく、ブランドが目指す女性像が伝わりやすくなるフォルムに進化させている。バストラインを1センチ下げて、肩甲骨を若干強調し、曲線のラインをしっかりと見せた。鶉さんが石膏(せっこう)を用いて、手作業で造形する。3Dプリンターを使ってもある程度は形にできるが、体の柔らかな線を出すには緻密(ちみつ)な手作業が欠かせないという。
北村さん自身は、3D・CAD(コンピューターによる設計)やソフトウェアのパターン作成も一通り経験したからこそ、「人間の感覚の必要性を実感している」と話す。「モデルが着用した時の雰囲気、実物の装いには必ず〝たたずまい〟が存在する。デジタルツールは時短になるが、たたずまいを画面上で感じるのは難しい。生でしか感じられないものを大事にしたい」という。
