ハリイのずれにくく蒸れにくいウィッグ アパレル経験を生かし開発

2026/02/04 11:30 更新NEW!


さかさまにして振っても落ちないほどフィット

 スタートアップ企業のハリイ(富山県富山市)は、ずれにくく蒸れにくいウィッグを開発販売する。鉄棒で一回転しても、ヨガのかがむポーズをハリイ(富山県富山市)は、ずれにくく蒸れにくいウィッグを開発販売する。鉄棒で一回転しても、ヨガのかがむポーズをしても大丈夫だ。脱毛症やがん患者にとって、そういったスポーツはウィッグがずれてしまうため諦めてしまう人がいる。地下鉄の風など日常の小さな不安も解消する。

(小坂麻里子)

突然の発症

 池野順子代表は文化服装学院を卒業後、デザイナーとしてカジュアルメーカーに就職。海外でワーキングホリデーを経験した後、外資系スポーツブランドなどで商品企画として働いていた。その頃、18年に脱毛症を発症した。ウィッグを買ったものの夏は暑く海に入れない。大好きなフラの発表会ではヘアアップが難しく、頑張って結んでも子供は正直な反応だった。「自分はマイノリティーになったんだ」と気付いた。

池野代表

 ウィッグを調べると長年変わらない作りだった。そこから大手ウィッグメーカーのバックヤードで働き、構造を研究する。「これなら作れる」と確信した。アパレルのように1年ほどで開発できるだろうと踏んでいた。

 そこからは起業の勉強をしながらウィッグの開発を進めた。富山県の地方創生で起業や移住の支援があることを知り、これは行くしかないと決心。前職での出張や旅行で良いイメージがあったことが後押しした。23年にハリイを起業し、24年にシードラウンド資金調達を実施。「スポーツウィッグ」を25年に出した。池野代表の予想に反し、開発開始から6年の歳月が経っていた。

 ウィッグの開発は「アパレル業界にいた時のノウハウが生かせている」と話す。まずウィッグがずれる原因はパターンにあるのではと考えた。そのため工夫したのは頭にかぶる部分のベースネットと、それをフィットさせる素材。

 一般的なウィッグのオーダーメイドはテープで型取りをするためどうしてもミリ単位でずれが出る。ハリイは頭部を3Dスキャンし立体模型を出力、無縫製で成形できるベースネットを開発した。一般的な医療用ウィッグは平面レースを立体的に縫製するため複数枚使うが、ハリイは1枚。暑い、重いといったウィッグの難点を克服し、薄くて軽い。

 ウィッグをずれにくくする素材は三井化学の体温を感知してフィットする「ヒューモフィット」を採用。縫製が大変で試行錯誤した。穴を開けることで通気性も確保した。手やドライヤーで温め肌になじませ、フィット感を出す。そのためスポーツなど激しい動きをしてもずれにくい。髪の重みで後ろにずれる心配も少ないため、アップスタイルも楽しめる。

 今はウィッグの試着、型取りできる場所を増やしている。東京・吉祥寺のサロンのほか、東海大学医学部付属八王子病院、富山大学付属病院、大阪国際がんセンターなどがある。

多くの反響

 最初は自分のために開発したウィッグ。しかし、クラウドファンディングやSNS発信で脱毛症当事者やがん患者の人からメッセージをもらうようになり、髪を失って諦めた日常を取り戻してほしい思いが大きくなった。特に子供たちが脱毛でスポーツや体育の時間を諦めてほしくないと強く思う。

 人手不足などの課題はあるが、今年はウィッグの量産化に向けた足腰固めのため、資金調達を実施予定。今後はウィッグのサブスクリプション(定額課金)なども視野に入れており、ウィッグの完成度を高めた後は、病気になっても動きやすいウェアの開発を計画している。



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