若者の「SNS疲れ」について話題になることがありますが、彼らの実態を見ていると、疲れないような工夫をしていることがわかります。
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うまく付き合う工夫
先日15~24歳のZ世代の男女400人を対象に実施したウェブ調査では「SNS疲れ」を感じると回答したのは約5割という結果となりました。具体的な疲れの原因については返信の義務感や返信がないことへの不安というコミュニケーションにおける疲れだけでなく、情報量の多さや他人の生活への羨望(せんぼう)、炎上している投稿への批判の声なども挙げられ、接触する情報による疲れも感じていることがわかります。
しかし、SNSを呼吸するように使っている彼らは、疲れを感じていても「SNSをやめたい」とは思っていないようです。むしろ、当たり前に存在するSNSがなくなることのほうが不安かもしれません。
世代の8割はSNSとうまく付き合っていくための工夫をしていることもわかっています。グループインタビューでも「SNSにのめりこみすぎると、見たくないものまで見てしまうので適度な距離をとっている」という声や、「SNS疲れは全然ないけど、飽きないように複数のアカウントを切り替えて、巡回して投稿を見ている」など、自分なりのルールを持ちながら、うまくSNSと付き合うZ世代の様子が聞かれています。ウェブ調査の結果では、「鍵アカウントや親しい友達で公開範囲を調整する」「アカウントを複数使い分ける」「SNSの閲覧を控える」が具体的な疲れ対策として挙げられました。
緻密で繊細な世界
Z世代たちはSNSでのコミュニケーションにおいて、相手との関係値に合わせて距離感の調節を上手に行っています。誰とでもつながることができるからこそ、自分自身の見え方をコントロールする必要性を感じているのです。
実際に「こんなにたくさん投稿したらフォロワーの友達にウザがられるかな」と心配する姿や、「色々なコミュニティーの人とつながっているアカウントでは映える写真だけ投稿する」などの実態が多くみられています。
「他者にどうみられるか」に非常に敏感な彼らは、誰に・どんな自分を・どこまでみせるべきか、常に意識を張り巡らせているのです。
最近新しく登場した〝デジタル秘密基地〟「ボンディー」や写真共有アプリ「ビーリアル」は、機能の新規性だけでなく、これまで彼らがSNSで行ってきた工夫をする手間が省けることも魅力です。どちらもアプリ内でつながる相手が関係値の深い仲の友達に限定されており、「どうみられるか」を心配することは減るため、気軽に投稿することができます。利用率は3%に満たないようですが、彼らのコミュニケーションにおけるインサイトをつかんでいると感じます。
若者のSNSにおけるコミュニケーションは、非常に緻密(ちみつ)で繊細です。企業としては彼らの世界を理解するだけでなく、彼らが大事にしている世界観を最優先に考え、サービスやプロモーションを提供することが非常に重要です。