イタリアの「セルジオ・ロッシ」は、アーティストの片山真理さんの「ハイヒール・プロジェクト」で義足用のパンプスを協業制作し、セルフポートレートの作品をSNSで発表した。先天性の疾患で9歳から義足で歩む片山さんは、ハイヒールを履いてバーのステージに立って歌いたいと11年にプロジェクトを立ち上げた。今回はその第2章。セルジオ・ロッシが義足用ハイヒールを制作したのは初めて。
協業のきっかけは、セルジオ・ロッシジャパンのスタッフが、12年に片山さんの作品を鑑賞していたことだ。日本の義肢装具士が制作したハイヒールを着用した写真だった。縁あって昨年、本国とのパートナーシップが実現した。
片山さんは日本在住だが、ミラノのデザインアトリエ、サン・マウロ・パスコリの自社工場とのオンラインミーティングを重ね、木型の選定からウォーキングのためのプロトタイプ作りなど生産工程を共有しながら進めた。ベースは、既成靴で扱っているプラットフォームのパンプス「シーロッシ」。職人をはじめ、生産チームのチャレンジ精神のもとで、美しいフォルムとテクスチャーのパンプスが出来上がった。ヒールの高さは約11センチ。着用に向けては電子制御の義足を使う必要もあったが、片山さんの経験値と身体能力によって乗り越えられたという。
「靴専門の技術と義肢装具士の知見、アート的な感性が交わって、一つの形を作ることができた。普段は作品の制作から発表まで自分だけで完結していましたが、様々な人がつながり、創ること、残すことの意味が自分の中で変わりました。工場を訪れると、職人さんらに『真理に会いたかったよ!』と声を掛けられ、プロジェクトが皆のものになっていることを感じました」と片山さんは話す。
セルジオ・ロッシのSNSでは、サン・マウロ・パスコリの工場やミラノの旗艦店などで撮影した作品を公開。片山さんは都内のギャラリーで開催中の個展で一部を展示している。