ふるさと納税の返礼品 自治体を応援するファッションアイテム

2020/07/03 11:00 更新


【センケンコミュニティー】《ふるさと納税返礼品》自治体を応援するファッションアイテム

 今月は「ふるさと納税」の返礼品になっているファッションアイテムを紹介します。地方自治体をファッションで応援する意味合いながら、人気商品も生まれています。

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●熊本県人吉市 ヒトヨシのシャツ

申し込み契機に新たな顧客に

くまモンのモチーフのあるシャツから始めた(ヒトヨシ)

 熊本県の最南端に位置する人吉市。標高1000メートル級の山々に囲まれ、豊かな水源である球磨川が流れる城下町。この地に本社兼工場を構えているのが、全国の百貨店・専門店でシャツを販売しているシャツメーカーのヒトヨシだ。人口約3万人の市名をそのまま社名に冠し、地元の雇用を守り、地域に人を集める取り組みにも積極的。そんな姿勢が愛され、ふるさと納税の返礼品で、都市部から多くの注文が入っている。

 同社のシャツは、17年9月に人吉市の専門店「シャリバリ」から提案を受け、同10月から人吉市のふるさと納税の返礼品に採用された。当初はくまモンのモチーフをつけたシャツ一枚から始めたが、顧客の要望もあり、2枚セットなどを始めた。

 納税額は初年度が約3700万円(17年10~12月)、18、19年度は約8600万円。ふるさと納税総額の約3~4割を占めているほどの人気となっている。申し込みは東京からが一番多く、大阪、神奈川、福岡、熊本と続く。都市圏からの申し込みが中心で、百貨店(特に阪急メンズ)でヒトヨシのシャツに触れている人からの申し込みが多いと見ている。

 ふるさと納税のウェブサイトからヒトヨシの自社ECへの流入が多く、返礼品をきっかけとした顧客化も進んでいる。

 もともと市とのつながりは深く、共に移住支援も行っている。また、JR人吉駅は、豪華列車「ななつ星」の停車駅で、列車の乗務員ユニフォームを手掛けているのもヒトヨシだ。工場に観光客を呼び込むなど、地域活性化の取り組みを拡大していきたい考えだ。

●長野県千曲市 フレックスジャパンのオーダーシャツ

長く愛着持てる品に支持

ギフトにもできるオーダーシャツは市のなかで件数トップの注文(フレックスジャパン)

 日本一長い川、千曲川(信濃川)が流れる長野県千曲市。なだらかな傾斜地に広がるアンズ畑は、春には花が満開になり、訪れた人を圧巻させる。シャツメーカーのフレックスジャパンは、約80年間一貫してこの地に本社と工場を構え、いまでは東南アジアなど世界にも進出している。

 千曲市のふるさと納税の返礼品として採用されているのが、ドレスのオーダーシャツだ。1万円以内価格のものからスタートしていたが、去年から1万6000円前後の高価な素材と仕様のものを出したところ、ふるさと納税への関心の高まりも背景に、大きく注文が増えたという。昨年は、一昨年対比で4倍で、今年は半年間ですでに昨年と同額の受注状況になっている。千曲市のなかでは件数だと1位、金額ではトップ10に食い込むほどだ。食品などが人気となっているふるさと納税のイメージだが、長く愛着を持てるものを探している消費者にとっては、シャツも選択肢のひとつとして支持されているようだ。

 注文は関東からが多く、「満足しました」という声をもらって新しい顧客化につながったり、「がんばれ千曲市!」と励ましの言葉が寄せられることもあるという。

 同社はこの間のコロナ禍で機能と素材を追求したハイブリッドマスクを千曲市役所や銀行、小学校、保育園に寄贈するなど、様々な角度から地域貢献にも取り組んでいる。

●千葉県柏市 柏レザーの革製品

地元のブランド豚が原料

オリジナルの「ご当地レザー」を使ったカラフルなトートバッグ(柏レザー)

 千葉県柏市でバッグ専門店「ぬいざえもん」を運営する柏レザー(飯島暁史代表)は、オリジナルで革から開発したバッグや小物を販売する。

 地産地消というキーワードで地元発のオリジナリティーが表現できる革の素材を探していた時に、地元のブランド豚「柏幻霜ポーク」(養豚場、惣佐衛門)と出会い、ご当地レザーを使った商品が誕生した。16年12月に試作品が完成し、翌年から量産ベースにこぎつけた。

 その豚革を使ったカラフルなトートバッグ(5万円の寄付)とペンケース(1万円の寄付)を2年前にふるさと納税の返礼品とした。飯島代表は「地元以外の人たちにも眠っていた地域資源を活用して開発した革の良さを知ってもらい、少しでも街の活性化に貢献したい」との思いが強い。現在は落ち着いたが、取り組んだ当初はコンスタントに売れたという。

 同商品のデザインは極力シンプルに、使いやすさを最優先にした。豚革は手触りが柔らかく優しい、そして軽い、通気性にも優れている。「その素材の良さを実感してほしくてあえて装飾を控えたデザインにした。流行に左右されず、長く使ってもらいたい」と飯島代表。黄、赤、緑の3色が持つ意味は、柏レイソル、チーバくん、シティーカラー(市章)をイメージしている。

●兵庫県神戸市 アレスの「神戸タータン」ストール

産業と街の活性化に一役

アレスの「神戸タータン」のウールストール

 カシミヤ製品などの製造販売、アレスは17年12月に「神戸タータン」を使ったマフラー、ストールが神戸市のふるさと納税返礼品に採用された。神戸タータンは、海の青、ポートタワーの赤、六甲山の緑など、神戸のイメージをタータンチェックで表現したもの。

 光沢が美しいカシミヤ100%のマフラー(寄付金額5万円以上)、フリンジ付きのウールマフラー(2万円以上)、フリンジ付き大判のウールストール(4万円以上)の3品を提供している。

 「思っていた以上に反応がある」(中村哲社長)とし、19年の申し込みは145件あった。内訳はカシミヤマフラー71、ウールマフラー64、ウールストール10。

 同社は神戸で創業し、長くカシミヤ製品の製造販売を続けている。中村社長は「私自身も神戸で生まれ育ち、住みやすくいい街だと思っており、大変愛着がある」ことから取り組むことにした。

 特に神戸タータンは地域の産業を活性化し、街を元気にすることが目的となっており、これを採用することが地域への貢献になると考えている。

●岐阜県恵那市 嵯峨乃やの下駄

東濃産のヒノキを使用

「ゲタル」には公式キャラクター「エーナちゃん」の刻印を入れた(嵯峨乃や)

 「恵那市は住みやすいし、物作りをする場所も広く取れる」と話す嵯峨乃(さがの)やの大森將人代表。京都出身の大森さんは恵那市に来て仕事を始め、もう10年になる。

 ふるさと納税返礼品で提供しているのが、サンダル仕様のオリジナル下駄ブランド「ゲタル」。2年ほど前、恵那市が始めた返礼品募集に応募。18年秋からふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」に掲載をスタートした。

 ゲタルの特徴は、5本指の鼻緒だ。指つぼを刺激することで、血行を良くし、浮き指を防ぐ効果があるという。サンダル仕様なので歩きやすく、足を置く台座は恵那市のブランドでもある東濃地方のヒノキを採用した。生産はものづくり補助金を活用して導入した高精度コンピューター制御加工機を用いて、自社アトリエで行う。

 返礼品のゲタルの台座には、特別に恵那市公式キャラクター「エーナちゃん」のレーザー刻印を入れ、収納するバッグもセットにした。ふるさとチョイスのサイトを見て、直営ECに購入に来る人も多い。

 現在、嵯峨乃やの最寄りであるの武並駅の近くの再開発で、「道の駅」構想が浮上し、話し合いのメンバーに大森さんも選ばれた。「ゲタルは恵那市に来て開発したブランド。市を盛り上げる力になりたい」と強調する。

●福岡県大刀洗町 ロォーリングの服飾雑貨

伝統技術を生かして

地域に役立てたいとの思いで製作した「侍マスク」(ロォーリング)

 福岡県南部の大刀洗町のロォーリング。先染め織りの「久留米織」「久留米絣」の伝統技術をベースに、オリジナル生地「からくり織」などによる商品を製作している。マフラーやネックウォーマー、スヌード、ネクタイ、ハンチングなどが返礼品。これまで年末の11~12月に集中していたが、「コロナ禍となり、何かできないか」(實藤俊彦社長)と、技術を生かした久留米絣の「侍マスク」を製作。5月中旬のサイトアップ以来、1日約10~30枚の申し込みがある。

 商品は天然繊維を主に使用し、環境にも優しく、永く愛着を持って使ってもらえるように丁寧な仕立てで、ファンが多い。また、返礼品と一緒に送るアンケート葉書や直接の意見を元に、日々改善も行っており、リピーターも多いという。實藤社長は「地場の伝統産業のイノベーションを通して、製品が喜ばれ、事業拡大に伴い雇用と文化の発展に寄与できる」と考えている。

 地元では17年前から、「花でいっぱいにしよう」運動も行い、参加者と環境整備にも取り組んでいる。侍マスクは、隣接する久留米市に寄贈するなど地域貢献にも力を入れており、同市でのふるさと納税の返礼品の受付も始まる。



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