仕入予算ってどう決めたらいいの?(佐藤正臣)

2016/12/16 00:00 更新


佐藤せんせの算数で極めるMDへの道⑪


 大手セレクトショップでMD(マーチャンダイザー)を務めていたマサ佐藤。バリバリと仕事をしていたマサだがその実、30代後半になるまで数値管理にはまったく疎(うと)く、本格的に始めたのは大手チェーン店に契約社員として入社した38歳になってからという。

 そこで鍛えられてフリーランスになったマサは、夜ごと、ホームである三軒茶屋界わいで、悩めるバイヤーやMDに講義を行っている。自称・三茶大学の先生であるマサ佐藤の20余回にわたる講義を覗いてみた。

■ 前回のレポートはこちら→OTB表活用方法のまとめ

 *    *    *




前回の講義でMD数値の基本的なところはひと段落しましたね。


はい。あ!せんせ。聞いてください。
 

どうかしましたか?
 

実をいうと、あの後私のブランドの数字を無理矢理ですが、OTB表化してみました。うちのシステム都合上、数値的に怪しいところ、とくに粗利益率と在庫なんですがあったのですが、そうすると今後私のブランドがやるべき方向性がなんとなく見えてきました。
 

おっ!! それはすごい!!


 それを上司に項目ごとに纏(まと)めて報告したところ、上司に感謝されました。そして、上司も勉強しようかなって言ってました(笑)。
 

それは大変良いことですし、そのことだけでも猛烈な進化ですね(笑)。で!話は変わりますが、Dさんのところ会社は仕入予算はどういう風に決めてます?
 

ん~~(悩)。期首在庫かどうかとか・・・定番商品はどうかとか・・・とかなんか色んなことあるみたいなんですけど、これまでは仕入予算は売価管理だったので、ざっくり言うと、期の売上予算の140%みたいな感じです。
 

売上予算140%が仕入予算だということは…
 
年間の売上予算を仮に100万円だとすると、100万×140%=140万円が仕入売価予算。140万ー100万=40万円。40万円分が売価変更可能金額。ということは?”40万÷140万=28.6%→OFF率=売価変更金額÷元売価金額”。あらかじめ、年間28.6%のオフ率を想定している
 

ということですね?


 へえ~。言われてみればそういうことになりますね。ただ、今までそんなことあまり考えたことがありませんでした。


 では?Dさん。年間28.6%くらいのセールができる。その数字の根拠ってなんですか?
まぁ~。そのくらいが私のブランドにあっているということですかね? ん~(悩)でも正直よくわかりません。


まぁ~。そのくらいが私のブランドにあっているということですかね? ん~(悩)でも正直よくわかりません。
 

ブランドのイメージを保つのには、そのくらいのオフ率の余裕が欲しいということですかね~? なんとなくは理解できますけど。


 ん~~~(悩)。


 昔の私もそうだったんですけど、意外に仕入の金額、言い換えればおこずかいの金額を決める根拠って知らないし、解らないもんですよね。


 そうですね~。私のブランドでは海外買い付けがあるのですが、上司からなんとく「まだ予算決まってないから、買い付け控えめにね」なんてことがよくありました。


 仕入予算の金額・根拠を決めるのに時間がかかる。でも、発注はやってくる。それは大変ですね~。


 そうねんです~(苦笑)。


 では、Dさん。今まで学んだことで、MDの数値には売上だけでなく何が必要だと言いましたっけ?


 えー、粗利益です。そして仕入・在庫管理は売価管理ではなく原価管理の方がベターだと。


 その通りです。ということは?当然仕入予算を決める際も?


 粗利益が必要なるということですね。そして、仕入売価予算ではく、仕入原価予算に変更するということですね。


 その通りです。Dさんのところの期(1年)の粗利益率ってどのくらいですか?


 この間調べたんですけど、50%弱で推移してました。


 では、Dさんのブランドの原価率の設定はどのくらいですか?
 

35%くらいです。ということは値入率の設定が65%くらいですね。
 

わかりました。では今回は、架空の事業部を想定し、以下条件を設定しましょう。
 

へえ(うわっ、また設定かよ~)。
 

では設定を以下説明します。
 
 1.架空の事業部の期の売上予算は1億円。粗利益率の予算は50%

 2.事業部の原価率の設定は35%。値入率の設定が65%

 3.今回はややこしくなるので、期首在庫・定番商品等の個々の会社特有の問題は設定しない。



 このくらいでどうです。


このくらいなら、すぐに理解できます。
 

では、次回はこの設定で、どうしたら根拠ある仕入予算が設定できるのかを考えていきます。次回をお楽しみに!!





95年(株)ノーリーズにアルバイトとして物流倉庫からスタートし、店頭勤務7年(レディース)。
02年より(株)ノーリーズにおいてメンズ(フレディ&グロスター・ノーリーズメンズ)立上をMDとして担当。
10年よりフリーランスとして活動開始。
シャツメーカーの新ブランド開発の企画サポート。
その他、新規ブランドの立上マーチャンダイジング計画など、
様々なフィールドで活躍したのち、14年5月末、株式会社エムズ商品計画を設立。
小売り企業へのMDアドバイスや専門学校での講義・また海外での講義等。
現在、多方面で活躍中
www.msmd.jp



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