佐藤せんせの算数で極めるMDへの道⑥
大手セレクトショップでMD(マーチャンダイザー)を務めていたマサ佐藤。バリバリと仕事をしていたマサだがその実、30代後半になるまで数値管理にはまったく疎(うと)く、本格的に始めたのは大手チェーン店に契約社員として入社した38歳になってからという。
そこで鍛えられてフリーランスになったマサは、夜ごと、ホームである三軒茶屋界わいで、悩めるバイヤーやMDに講義を行っている。自称・三茶大学の先生であるマサ佐藤の20余回にわたる講義を覗いてみた。
■ 前回のレポートはこちら→売価・原価・粗利益・値入の理解
* * *
唐突ですが、Dさん。弁当屋さんになってください。
えっ?弁当屋に??(なんなの、このマスクマン)。
ちょっと、言葉にご幣がありましたね。よくランチ時にワゴン車で弁当を販売しているところ見かけますよね?その弁当屋をDさんが始めたと考えてください。
へぇ。でもなんで弁当屋さんなんです?
前回学んだ売価・原価・値入・粗利益そして「ロス」をわかりやすく理解するにはいいかなと思って。洋服は弁当と違って、廃棄せず翌年も売ることができますが、ロスを理解するのは単純化した方がいいんじゃないかと。
なるほど。
Dさんはワゴン販売の弁当屋さんで1日で100円の弁当を100個売ることにした。原価は20円。以下の3つのパターンで商売が終了したことにします。
・(A)100円の弁当が100個すべて売れた。
・(B)弁当が残りそうだったので、残り40個になった時点で50%オフして全部売り切った。
・(C)弁当が残りそうだったので、残り40個になった時点で30%オフして売ったが5個弁当が余った。残った弁当は廃棄した。
では、Dさん、上のA~Cの3つのケースの売上・粗利益率等を計算してもらっていいですか。
わかりました。せんせ、表にしてみました。以下ご覧ください。
Dさん。すごいですね~!Excelで表現しているじゃないですか。
せんせに言われて最近密かに勉強中です。
粗利益の粗と荒の使い分けもきちんとできてますね。
はい。ありがとうございます。Cのパターンだと荒利益率は77.5%で、荒利益高は6550円です。5個余って廃棄したので、原価20×5=100円がロス高。粗利益高は6550-100で6450円。よって粗利益率は6450円÷8450(売上高)で76.3%です。ロス率は77.5%-76.3%で1.2%でーす。
完璧じゃないですか!ではDさん。誰が見てもAのケースが一番MDとして良いとして、BとCのケースならば、MDとして選択すべきはどちらのケースだと思いますか。
うーん・・・うちの会社は上司から口酸っぱく「在庫残すな!! 在庫をお金に変えろ!!」と言われるので、Bですかね~。
そうですね~最近の地球環境考えても、廃棄することは環境によくありませんからね。ではDさん、この図の粗利益高のところみてみてくさい。どうなってます?
Bが6,000円でCが6,450円ですね・・・あっ!そうか。MDが選択すべきはCですね。Cの方が在庫が残っても粗利益高が高いからです。
正解です。以前の講義の「MDの目的」ってところで、「粗利益高」を少しでも多くとることがMDとしての目的の一つであると説明しましたね。地球環境的にはBを選択すべきでしょうが、MD的にはやはりCですね。
ですよね~。
Bのケースは在庫をなくすことに躍起になって、過度なOFF率で売ってしまっている。お客様側から考えると当然、安くなれば安くなったぶんだけ購買意欲が湧きますから、必然的に商品は減りますし、最後にはなくなります。
でしょうね。
しかし、過度なOFF率で商品を売ってしまうということは、本来あったであろう粗利益高を減らすことにもなりますし、服屋の場合はブランド・ショップのイメージを考えても好ましくないことですよね。だからこそ、OFFの施策を行う際には売上と粗利益と在庫のバランスを考えながら慎重かつ大胆に実行しなければなりません。
本当にそうですね~。売り切るよりも売れ残りした方が粗利益率が高くなるケースもあったのは驚きでした。今までセール時は在庫を減らすことに集中しすぎて、そのようなこと少しも考えてませんでした。とても勉強になりました。次回のセールの際は上司と相談しながら慎重にOFF率の設定を行います。
では次回からは、違うカテゴリーにステップアップしていきます。お楽しみに!
95年(株)ノーリーズにアルバイトとして物流倉庫からスタートし、店頭勤務7年(レディース)。
02年より(株)ノーリーズにおいてメンズ(フレディ&グロスター・ノーリーズメンズ)立上をMDとして担当。
10年よりフリーランスとして活動開始。
シャツメーカーの新ブランド開発の企画サポート。
その他、新規ブランドの立上マーチャンダイジング計画など、
様々なフィールドで活躍したのち、14年5月末、株式会社エムズ商品計画を設立。
小売り企業へのMDアドバイスや専門学校での講義・また海外での講義等。
現在、多方面で活躍中
www.msmd.jp