佐藤せんせの算数で極めるMDへの⑰
大手セレクトショップでMD(マーチャンダイザー)を務めていたマサ佐藤。バリバリと仕事をしていたマサだがその実、30代後半になるまで数値管理にはまったく疎(うと)く、本格的に始めたのは大手チェーン店に契約社員として入社した38歳になってからという。
そこで鍛えられてフリーランスになったマサは、夜ごと、ホームである三軒茶屋界わいで、悩めるバイヤーやMDに講義を行っている。自称・三茶大学の先生であるマサ佐藤の20余回にわたる講義を覗いてみた。
☆ ☆ ☆
Dさん。唐突ですが、質問です。Dさんの会社では商品を追加生産することはありますか?
へい、あります。
では?商品の追加する際の基準はどうしてます?
当然、日だったり、週の売上データをみて、判断しますね~。ただ、その明確な基準なんてものは・・・どうでしょう?「感覚」「勘」ですかね~。それってダメですか?
いえいえ、正直いうと私も同じようなもんですよ(笑)。確かに明確な基準というのは、ないに等しいかもしれませんね~。
ですよね~。ブランドやショップによっても、全然違っていい筈(はず)ですよね?
その通りですね。「うちは絶対に商品を追加しない!!」なんて、企業もありますし、それぞれに基準も違うでしょうね。では、ここで質問を変えますが、Dさんは追加する際に数量はどうやって決めています?
データ使ったり、自分なりの計算してみたり、色んな方法を使うんですが、「これだ!」って方法を人に説明できるようなことはしていません。
そうですか。では、結果的に追加した商品はどうなります?
思ったよりも全然足りないときもありますし、逆に数量が多すぎて商品が残ることもありました。
そうですか。では、今回は商品の追加について考えてみましょう。
へえ。
まず、あるブランドがそのシーズンの売上が芳(かんば)しくなかったとする。その場合、「売上を早期に改善したい!」と考えたとすると、Dさんどのような方法があるのか解ります?「セールをする」という方法以外で考えてください(笑)。 あと、店が接客を頑張る!とかいうのも、今回の講義の特性上なしです(笑)。
ん~・・・・・・・売れる商品を開発する??
まあ、ほぼ正解です(笑)。簡単に言えば、(売上が悪くても) 売れる商品を新たに仕入れるということです。但(ただ)し、期中での売上改善を目指して、新たに商品開発なんてしているとそれこそ間に合わないケースが多いですね。また、メーカー等に掛け合ってすぐに仕入られる商品を探しても、当然メーカーも(リスクを負いたくないから)在庫を持ってないケースも多い。当然のことながら残っている在庫は(そもそも)売れない商品の可能性も高い。
ある意味、そのシーズンの売上が芳しくないと、その傾向を変えるのは劇的に難しいことです。
そうなんです。但し、そんな中でも必ず人気商品というのはあることでしょう。だからこそ、人気商品を追加仕入して売上を改善する。ということが、一番リスクの少ない方法でもあるんです。新規商品を新たに仕入れるということも考えられますが、売れるか売れないかのギャンブル性が高まります。
なるほど~。
また、追加商品を必要な期間。必要な数量だけ。仕入れることができれば、在庫リスクという面においても一番有効な手段となります。
でも、そんな方法あるんですか?
正直100%確実という方法はありません。しかし、追加するような商品は過去の自店・自ブランドのデータが使えるという、大きなアドバンテージがあります。
そうか。なんかしらのデータが使えれば、そんなに大きく追加商品の数量を間違える可能性が少ないということですね!
その通りです。では、Dさん。商品を追加する際に、まず気を付けなければならないことは何ですか?
その商品が今後売れるか、ということですか?
(笑)。当然その通りなんですが、商品を追加する判断をとにかく早くするということです。例えば、入荷から1か月たって追加を判断するのと、入荷した翌日に判断するのとでは、Dさんどちらが良いと思います?
それは当然入荷した翌日です。判断を早くしないと人気商品が店頭からなくなってしまう期間が増え、売上に影響しますよね。
その通りです。”追加ジャッジを早くする”このことが一番大事なことなんです。しかし、入荷して翌日に追加する商品の数量を決めるなんて、なんだか怖いですよね?
そうですね。どうしても及び腰になってまいます。
では、Dさん質問を少し変えますね。商品を追加の数量を決める際に意識しないといけないことはなんでしょうか?
えっ????…数量を外さないことですか?
(笑)。当然そうなんですが、その数量を外さないようにするには?
ぜんぜんわかりませんえん。
(笑)。そうですか。では説明しますね。それは、
①その商品はいつまで販売するのか?ということ(販売終了日は?)
②リードタイム→追加商品を発注してから、商品が店頭に入荷するまでの期間
③精度の高い売上数量予測
この3点ですかね。
なるほど そうですね。今までは③はなんとなく感覚でやってました。①②に関しては頭の中にはあったんですが、言われてみればというレベルでした。
では次回は上記の3点を考えながら、実際に追加商品の数量をシミュレーションしてみましょう。
へえ。わかりました。
では次回をお楽しみに!!