「サカイ」 小田原でリアルショー 女性らしいしなやかさ表現

2020/10/09 06:30 更新


 「サカイ」が久しぶりに日本でショーを開催し、21年春夏コレクションを見せた。デジタルショーが多数を占めた常連のパリ・コレクションではなく、今できる形のリアルショーにこだわった。会場に選んだのは、小田原の江之浦測候所。海を見下ろす屋外アートスペースで、愛情あふれる温かいショーを行った。

 石畳みが並ぶランウェーに沿って、ずらりと並べられたのはアクリルのミニボックス。観客は一人ひとり、その中でソーシャルディスタンスを保ちながらショーを見る。あいにくの雨もしのぐ透明なボックスと日本の石庭が相まって、現代アートのような空間が出来上がった。

 そこに登場したのは、阿部千登勢が大切にしてきた日常のワードローブを起点にしたハイブリッドスタイル。メンズのジャケットやミリタリーアイテムを、エレガントなドレスに落とし込むことで、女性らしいしなやかな強さを表現した。テーラードジャケットやリブニットセーターの胸元やウエストあたりにはMA-1をドッキング。これまでパターン上で異なるアイテムを合体させてきたが、今回のテクニックはトルソーの上で異なるアイテムを重ねつまみながら合体させているように見える。それがクチュールのような丸みを帯びたフォルムを生み出す。日常を感じさせるボーダー柄やパジャマと、非日常のドレスの融合は、今を感じさせる。フィナーレで流れた英国の女性シンガー、シャーデーの曲「キス・オブ・ライフ」も今回のショーを象徴する。「今って本当にキス・オブ・ライフじゃないですか」と阿部。

 来場者はプレスやバイヤー、芸能人ら200人。皆、久々の大がかりなリアルショーに喜びがほとばしり、会場は終始温かいムードで包まれた。阿部も「楽しかった」と充足の笑顔を向けた。

(青木規子)

サカイ(写真=Koji Shimamura)
小田原の江之浦測候所を会場に
観客用のアクリルボックスが設置された


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