《ニュース2025》トランプ関税、影響軽微だが転嫁本格化による需要減を懸念

2025/12/31 06:28 更新NEW!


米国と日本の関税交渉も数度にわたり、最終的に15%に引き下げられた

 今年1月に発足したトランプ政権は貿易赤字の解消を掲げ、各国に相互関税を課すと発表した。世界の既存サプライチェーンを揺るがす事態に、繊維アパレル業界も身構えたが、ここまでは大きな影響は顕在化していない。だが行き場を失った中国製品が東南アジアなどに安価で流入するなど間接的な影響も見られる。また米国内で関税分の転嫁が本格化すると、景気への影響が懸念される。

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世界の貿易に混乱

 米政権発足間もない4月上旬、各国対象の相互関税が発表され、世界を混乱に陥れた。ベトナム46%、カンボジア49%、インドネシア32%など繊維生産国が軒並み高率を課され、日本も24%を示された。結局、延期や交渉を経て、日本は15%に、東南アジア各国は20%程度になった。

 日本企業による米国販売は、日本製の直接輸出は限定的で海外製が中心。また素材メーカーや商社は海外の縫製地を経由して生地を間接輸出するほか、縫製品などを扱っている。発効前には駆け込み需要で一時的な売り上げ増になったものの、反動で仕入れが抑制されて減速した。

 また販売減を防ぐために関税分を製造者で負担し合おうと、海外取引先から値下げ要請があったと指摘するテキスタイルメーカーも少なくない。

中国品流入の恐れも

 ただし日系有力アパレルへの影響は限定的。ファーストリテイリングは米国の新規店舗の販売が好調で、出店拡大も継続する。サプライチェーンについても「中長期的な視点で生産地を最適化している。関税を過度に気にして変更することはない」という。アシックスは営業利益ベースで関税の影響を最大50億円見込んだが、税率の確定で30億円に修正した。米国市場はランニング専門店シェア1位を目指し、好調は続くと見る。

 素材メーカーでは東レが今期(26年3月期)事業利益で150億円のマイナス影響を見込んだが、間接影響の算定が困難として11月時点で直接影響年50億円とした。うち繊維は20億円で、価格転嫁はできているものの、販売先が様子見するなどの反応も含め、受注減を見込む。

 今後は米店頭で関税分の転嫁が本格的に始まった際の消費減退が懸念される。また間接影響として中国品との競合激化が起こっている。中国との関税交渉は最終決着していないが、米向け輸出はすでに大幅に減少し、中国内需の低迷も重なって行き場を失った商品が安値で東南アジアや中東などに流入し、日本企業のビジネスにも影響が出ている。

(繊研新聞本紙25年12月17日付)



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