小笠原×青木 19春夏NY&欧州コレの見所とは?

2018/09/10 13:00 更新


 そろそろ、ニューヨークから始まる欧米のコレクションサーキットが始まります。そこで今回も出発前の小笠原、青木両記者に今回の見所を語ってもらいました。

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―まずは、ニューヨークから。

小笠原 ニューヨークでは、「プロエンザ・スクーラー」と「ロダルテ」が再び戻ってくるのがトピックのひとつ。

青木 ここ2シーズンは、プレコレクションの時期と重なるオートクチュールの時に見せてましたが、彼らがまた発表の場をニューヨークに戻すんです。

小笠原 ニューヨークの前である7月にパリ・オートクチュールで発表して、バイヤーの仕入れバジェットを先に確保し、よりインターナショナルなブランドとして飛躍したいというのが思惑だったとは思うんだけど、結果、どうだったのか。ニューヨークにとっては有力ブランドが増えるのはいいことだけど、思惑通りにいかなかったように見えるのは気になるところだよね。これはクリエーションと言うよりはビジネスの問題だけど。

青木 今回は「ヴィクトリア・ベッカム」も発表の場所をロンドンに移し、「デレク・ラム」もやらない。だから、余計にこの2ブランドに期待がかかります。

小笠原 ラフ・シモンズの「カルバン・クライン」はあるけどね。

青木 確かに。とはいえ、今回の欧米のコレクションの2大ニュースは「バーバリー」と「セリーヌ」の動向ですよ。

ーでは、そのバーバリーのロンドンについて。

青木 リカルド(・ティッシ)のバーバリーは、日本では意外と受け止めた人が少なくなかったのですが、ロンドンでは前評判がいいようです。ロンドン通信員の若月(美奈)さんからの前情報ではそんな感じらしくて。

小笠原 リカルドがやっていた「ジバンシィ」は良かったしね。後半は彼の得意な、いわゆるゴシックなムードに行っちゃったけど、メンズに関してはひとつの時代を作った感もあるから。

青木 バーバリーはリカルドを使ってメンズを盛り上げたい、っていうのがあるんでしょうね。

小笠原 メンズだけではないと思うよ。バーバリーを手掛けるっていうことで言えば、元々リカルドは英国ベースで勉強した人だし期待が高まるのもわかる。すでに、プレコレクションではコーディネートを組んでるし、ヴィヴィアン・ウェストウッドと組んだカプセルコレクションもすでにデザインしてる。

青木 じゃあ、もう多少は表に出てきてるんですね。

小笠原 そう。パンクを含めてイギリスの伝統的なものを背景にしたモノの作り方はバーバリーでも出来そうな感じはある。そういう意味では俺は面白そうなものになる気がしてる。

「バーバリー」18年フェブラリーコレクション

ーメンズとレディスの両方見せる?

小笠原 うん。でも、”シーナウ・バイナウ”ではないようだね。カプセルではすぐに売るものもやるみたいだけど、ショーで見せるのはこれまでのように次に売るものみたいよ。

青木 なるほど。そのほか、ロンドンで気になるのは、多くの有力ブランドがスケジュールから消えたことですね。「マルケス・アルメイダ」「フォスティンヌ・シュタインメッツ」「マルベリー」「ソフィア・ウェブスター」などもやらない。その分、無名の新人がどっと登場します。こちらも注目ですね。

ーミラノは。

青木 注目は「プラダ」と「モンクレール・ジーニアス」でしょうか。ジーニアスは2シーズン目。8人の有力デザイナーが手掛ける新しいモンクレールの形は、ファーストシーズンも話題が尽きませんでした。デザイナーごとに毎月発売していくスタイルで、毎月ニュースになっていた。販売の仕方も含めて戦略が練られているのを感じます。

小笠原 次の(協業する)メンバーは変わるの?

青木 ジーニアスの企画が新しいのは、メンバーとの取り組みが長期的に続く点です。他のデザイナーが加わる可能性もあるそうですよ。継続できるところにモンクレールの豊富な資金力を感じます。(ピエールパオロ)ピッチョーリとか。

小笠原 まだやってんの、ピッチョーリ。

青木 やってますよ。どんな発表の仕方になるのか楽しみです。もう一つ、気になるのは、「グッチ」が19日の夜に企画しているバレエのマイケル・クラーク・カンパニーと行うイベント。まだ全貌は明らかになっていませんが、とても気になります。ミラノではグッチのショーはないものの、新進ブランドも展示会も多いので、今シーズンも大忙しになりそうです。ただ、パリの初日が1日繰り上がったので、日程が重なってるミラノの最終日はバイヤーもメディアも早くにパリに移動するみたいです。「アツシ・ナカシマ」と「チカ・キサダ」が最終日だったのは残念です。

小笠原 ミラノが力を入れている「グリーン・カーペット・ファッション・アワード」は?

青木 協会が前シーズンから力を入れているサステイナブル切り口のイベントですね。前回はアナ・ウィンターもプレゼンターだったし、ミラノの一大イベントです。みなさん、参加されると思いますよ。小笠原さん、行ったことないですよね(笑)。

小笠原 あれ、タキシード着なきゃいけないんだよね。

ーグッチがパリに行ったのは?

青木 グッチは今年の初めから、「フランスへのオマージュ三部作」っていうのをやっているんです。一つ目はパリの「5月革命」を背景にした広告宣伝、二つ目は南仏で行ったリゾートコレクション。三つ目が19年春夏コレクションにあたるので、パリでやることは必須なんです。ミラノの協会には今回限りと伝えているようですが。パリ初日は「ディオール」もあるし、パリコレの中では初日に一番大きな波が来ることになり、かなり盛り上がりそうです。で、もう1つの注目が、エディ(・スリマン)が手がける「セリーヌ」。レディスブランドのセリーヌというより、メンズも始まるセリーヌというのが話題ですね。小笠原さん、どうですか?

小笠原 んーー、まあ、ブランドの戦略の問題だからね。俺はちょっと冷めてみてるけどね。エディを選んだ時点で、メンズを初めてやることも含め、商売というか売れるものにしたいという戦略がね。一般的には期待はあるんだろうけど、この間のフィービーのセリーヌに対する女性の憧れはまだあるわけだから、エディになったことを今のセリーヌファンが必ずしもポジティブに見てるわけではないんじゃない。

「グッチ」18~19年秋冬コレクション

ーどんなセリーヌになるかは全くわからない。

青木 表参道店が8月に閉まって、テンポラリーショップを原宿のバツ・アートギャラリーでやってるんですが、そこの女性スタッフは刈り上げでスキニーな感じの人が採用されてました。着用している服はフィービーが監修したセリーヌですが、スタッフの雰囲気はマスキュリンで、すでにエディの匂いが見え隠れしてるんです。今を前向きに生きるエレガントな女性のイメージから、今回のコレクション発表で一気に「エディのセリーヌ」にシフトして行くでしょうね。新しい女性ファンをつくろうというより、男性ファンがどういう風に見るのか、がポイントになるような気がしますが、どうですかね。

小笠原 いや、それは市場規模から言ってもレディスでしょう。レディスをどう作るかがメインです。エディがデザインすることにどういう意図が込められるのか。「サンローラン」のマーケットを奪おうとするのか、ロリータの女性像を描いてセリーヌの顧客をグッと若返らせたいのか。色んな思惑がブランドサイドにあるから、それはコレクションをみて確かめたいよね。

「セリーヌ」18年春夏コレクション

ーどう言った内容になるのかはアナウンスされていない。

小笠原 ないね。だから、エディの過去のデザインの仕方を辿って予想するしかない。こればかりは見て見ないとわからない。

青木 でも、大きく変わることは確かですよね。

小笠原 ビジネス目的のブランディングを背景にしたビッグメゾンのデザイナーの入れ替えってここの所ずっとあるけど、それに対する冷めた気持ちは僕ら見ている側にはある。やっぱり、ファッションを動かす新しい才能がどう出て来るのか、っていうのは実は大きな課題だと感じている。それによってファッションがどう変わって行くのかが常に気になっている。

青木 ですよね。

では、答え合わせは現地からのレポートで。

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