【回顧2019】大型施設相次ぐ渋谷 すみ分けで共存図る

2019/12/31 06:28 更新


■470店以上増える

 東京五輪・パラリンピックが開催される20年とその後を見据え、首都圏で大型再開発が活発だ。その中で、今年は11~12月に東京・渋谷で大型商業施設の開業が相次ぎ、大きな話題を呼んだ。

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 東急、JR東日本、東京メトロが共同で開発し、27年度の全体完工を予定する渋谷駅周辺の大型複合施設「渋谷スクランブルスクエア」の第1期棟(東棟)が東口に11月1日にオープン。同月22日にパルコが公園通り沿いに新しい渋谷パルコ、12月5日に東急不動産が駅西口前に新しい東急プラザ渋谷を開業した。

 いずれも、オフィスゾーンをビル内に備えた。スクランブルスクエアは地下7階~地上47階のうち、地上17~45階がオフィスフロアで、商業施設は地下2階~地上14階。パルコはオフィスとの複合ビル(地下3階~地上19階、パルコは地下1階~地上9階と10階の一部)に建て替わった。東急プラザは東急不動産が旧東急プラザ跡地を中心に再開発した大型複合施設「渋谷フクラス」(地下4階~地上18階)の地上2~8階と17、18階に開業した。3施設の開業でオフィスワーカーも大幅に増えた。

 店舗数はスクランブルスクエアが212店、パルコが193店、東急プラザが69店。この2カ月で、同じエリアに合わせて470店以上が増えた。そのため、競争激化を懸念する声もファッションビジネス、SC業界内で多かった。

 しかし、いずれも現在までの来館者数、売上高は計画を上回っている模様だ。開業前から多くのマスメディアやSNSで取り上げられ、オフィスワーカーを含めて来街者が増えたことに加え、各施設がコンセプトや中心顧客対象、店舗構成で違いを出し、〝すみ分け〟できているのが要因とみられる。

■施設の特徴を明確化

 店舗構成ではいずれも食を充実し、スクランブルスクエアとパルコはラグジュアリーブランドを軸に高感度ファッションを強化した。ただし、スクランブルスクエアがワーカーを中心に幅広い層を狙った店舗をファッション以外を含めて多く揃えたのに対し、パルコは外国人も含め、「感度が高く、ファッション好き」で、コアな客層を狙ったMDを前面に出した。

 東急プラザはファッションの比率は低く、他の2施設の中心客層に比べて年代が上の40代以上の大人を対象に、物販以外の店舗を充実した。商業激戦区でも施設ごとの特徴を明確にすれば、共存できることを示している。

 来年は3月にパルコにパルコ劇場がオープンし、春夏の予定で三井不動産が宮下公園に商業、ホテルなどの複合施設を開業する。既存施設では渋谷109が今春から本格的に開始した大型改装を来年夏までに完了させる予定。渋谷はさらに活気づきそうだ。

新施設開業で、渋谷のにぎわいはさらに増している

(繊研新聞本紙19年12月25日付)



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